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社会福祉法人の「評議員会」とは

社会福祉事業

社会福祉法人は、その内部の機関として「評議員」と「評議員会」を設置する必要があります。

社会福祉法
(機関の設置)
第三十六条 社会福祉法人は、評議員、評議員会、理事、理事会及び監事を置かなければならない。

この記事では、評議員会の構成員となる「評議員会」について説明します。

評議員会とは

評議員会は、法人の運営に関する意思決定の最高機関にあたります。

社会福祉法人制度改革によって、評議員会の位置付けが見直されました。
平成29年4月1 日に施行された改正社会福祉法により、評議員会は、それまでの任意設置の諮問機関から、必置の議決機関となりました。

評議員会は、法人の運営に関する重要事項について、評議員の評決で決定します。

主な決議事項については、社会福祉法に規定があり、次のとおりです。
厚生労働省が作成した「社会福祉法人定款例」にも盛り込まれています。

評議員会の決議事項

・理事、監事、会計監査人の選任(社会福祉法第43条)
・理事、監事、会計監査人の解任★(同法第45条の4第1項及び第2項)
・理事、監事の報酬等の決議
(理事:同法第45条の16第4項において準用する一般法人法第89条)
(監事:同法第45条の18第3項において準用する一般法人法第105条)
・理事等の責任の免除★
(全ての免除:同法第45条の20第4項で準用する一般法人法第112条 ※総評議員の同意が必要)
(一部の免除:同法第113条第1項)
・役員報酬等基準の承認(同法第45条の35第2項)
・計算書類の承認(同法第45条の30第2項)
・定款の変更★(同法第45条の36第1項)
・解散の決議★(同法第46条第1項第1号)
・合併の承認★
(吸収合併消滅法人:同法第52条)
(吸収合併存続法人:同法第54条の2第1項)
(法人新設合併:法第54条の8)
・社会福祉充実計画の承認(法第55条の2第7項)
・その他定款で定めた事項(任意的記載事項)
(いずれも普通決議を要する事項に該当)
例1)事業計画及び収支予算を評議員会承認事項とする場合
例2)評議員会運営規程を設ける場合
例3)その他の諸規程の一部を評議員会決議事項とする場合
例4)施設の新設・大規模改修

★:その決議事項には、同法第45条の9第7項の規定により、議決に加わることができる評議員の2/3(これを上回る割合を定款で定めた場合は、その割合)以上に当たる多数をもって決議を行わなければならない事項が含まれます

評議員会の性質

評議員会は、法人の運営に関する意思決定機関として、大きな権限を持っています。

その意思決定は、民主的に、適正な手続きによって行われる必要があります。

よって、評議員会は、評議員のすべてによって組織することが求められます。

社会福祉法
(評議員会の権限等)
第四十五条の八 評議員会は、全ての評議員で組織する。
(略)

また、評議員会は、社会福祉法人の運営方針を決定する機関ですから、法令を遵守する必要があります。

よって、評議員会は、社会福祉法や定款に定められたことのみ、評決できます。

社会福祉法
(評議員会の権限等)
第四十五条の八 (略)
2 評議員会は、この法律に規定する事項及び定款で定めた事項に限り、決議をすることができる。
(略)

加えて、評議員会は、法人の意思決定機関として、自主独立が求められます。

よって、評決すべき事項について、理事や理事会などの他の機関に委ねることはできません。

社会福祉法
(評議員会の権限等)
第四十五条の八 (略)
3 この法律の規定により評議員会の決議を必要とする事項について、理事、理事会その他の評議員会以外の機関が決定することができることを内容とする定款の定めは、その効力を有しない。
(略)

参考:一般社団法人及び一般財団法人に関する法律の準用について

社会福祉法人は、一般社団法人や一般財団法人と、法人運営の方法が共通している部分があります。

例えば、上記の評議員会や、評議員に関する規定の一部についても、共通しています。

そうした部分については「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」の規定を準用することになっています。

上記の社会福祉法第45条の8では、第4項で、次のとおり準用しています。

4 一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第百八十四条から第百八十六条まで及び第百九十六条の規定は、評議員について準用する。この場合において、必要な技術的読替えは、政令で定める。

社会福祉法施行令
(評議員に関する読替え)
第十三条の五 法第四十五条の八第四項(法第四十六条の二十一の規定により適用する場合を含む。)において評議員について一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第百八十六条第一項の規定を準用する場合においては、同項中「第百八十二条第一項」とあるのは、「社会福祉法(昭和二十六年法律第四十五号)第四十五条の九第十項において準用する第百八十二条第一項」と読み替えるものとする。

一般社団法人及び一般財団法人に関する法律
(評議員提案権)
第百八十四条 評議員は、理事に対し、一定の事項を評議員会の目的とすることを請求することができる。この場合において、その請求は、評議員会の日の四週間(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前までにしなければならない。
第百八十五条 評議員は、評議員会において、評議員会の目的である事項につき議案を提出することができる。ただし、当該議案が法令若しくは定款に違反する場合又は実質的に同一の議案につき評議員会において議決に加わることができる評議員の十分の一(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の賛成を得られなかった日から三年を経過していない場合は、この限りでない。
第百八十六条 評議員は、理事に対し、評議員会の日の四週間(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前までに、評議員会の目的である事項につき当該評議員が提出しようとする議案の要領を第百八十二条第一項又は第二項の通知に記載し、又は記録して評議員に通知することを請求することができる。
2 前項の規定は、同項の議案が法令若しくは定款に違反する場合又は実質的に同一の議案につき評議員会において議決に加わることができる評議員の十分の一(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の賛成を得られなかった日から三年を経過していない場合には、適用しない。

(評議員の報酬等)
第百九十六条 評議員の報酬等の額は、定款で定めなければならない。

評議員会の運営

評議員会の運営についても、社会福祉法に定めがあります。

評議員会の開催

評議員会は、必要があれば、いつでも招集できます。

なお、会計年度の終了後には、定時の評議員会を招集する必要があります。

定時評議員会は、毎会計年度終了後、一定の時期に招集しなければいけません。
一定の時期とは、所轄庁に届け出る計算書類の作成期限が会計年度(4月~翌年3 月)終了後、3か月以内とされているため、6月末日までとなります。

社会福祉法
(評議員会の運営)
第四十五条の九 定時評議員会は、毎会計年度の終了後一定の時期に招集しなければならない。
2 評議員会は、必要がある場合には、いつでも、招集することができる。
(略)

評議員会は、原則として、理事(通常は理事長)が招集します。

理事会の決議で、評議員会の日時、場所、議題、議案の概要を決定します。

また、理事は、評議員の求めに応じて、評議員会を招集することもできます。

社会福祉法
(評議員会の運営)
第四十五条の九 1~2(略)
3 評議員会は、第五項の規定により招集する場合を除き、理事が招集する。
4 評議員は、理事に対し、評議員会の目的である事項及び招集の理由を示して、評議員会の招集を請求することができる。
(以下略)

なお、評議員の求めに対して、理事が評議員会を遅滞なく開催しない場合、評議員は、所轄庁の許可を得て、評議員会を招集することができます。

社会福祉法
(評議員会の運営)
第四十五条の九 1~4(略)
5 次に掲げる場合には、前項の規定による請求をした評議員は、所轄庁の許可を得て、評議員会を招集することができる。
一 前項の規定による請求の後遅滞なく招集の手続が行われない場合
二 前項の規定による請求があつた日から六週間(これを下回る期間を定款で定めた場合にあつては、その期間)以内の日を評議員会の日とする評議員会の招集の通知が発せられない場合
(以下略)

評議員会における決議

評議員会の決議には「普通決議」と「特別決議」があります。

普通決議

普通決議は、過半数以上の評議員の出席において、その過半数以上の決議が必要です。

決議について、特別の利害関係のある評議員は、決議に加わることができません。

社会福祉法
(評議員会の運営)
第四十五条の九 1~5(略)
6 評議員会の決議は、議決に加わることができる評議員の過半数(これを上回る割合を定款で定めた場合にあつては、その割合以上)が出席し、その過半数(これを上回る割合を定款で定めた場合にあつては、その割合以上)をもつて行う。
7(略)
8 前二項の決議について特別の利害関係を有する評議員は、議決に加わることができない。
(以下略)

特別決議

特別決議は、評議員の2/3(これを上回る割合を定款で定めた場合は、その割合)以上の多数によって行います。主な特別決議は次のとおりです。

①次の事由による監事の解任
・職務上の義務に違反し、または職務を怠ったとき。
・心身の故障のため、職務の執行に支障があり、またはこれに堪えないとき。
②理事、監事、会計監査人の職務懈怠によって生じた、法人に対する損害賠償責任の免除
③定款の変更
④法人の解散
⑤吸収合併消滅社会福祉法人における吸収合併契約の承認
⑥吸収合併存続社会福祉法人における吸収合併契約の承認
⑦新設合併消滅社会福祉法人における新設合併契約の承認

決議について、特別の利害関係のある評議員は、決議に加わることができません。

社会福祉法
(評議員会の運営)
第四十五条の九 1~6(略)
7 前項の規定にかかわらず、次に掲げる評議員会の決議は、議決に加わることができる評議員の三分の二(これを上回る割合を定款で定めた場合にあつては、その割合)以上に当たる多数をもつて行わなければならない。
一 第四十五条の四第一項の評議員会(監事を解任する場合に限る。)
二 第四十五条の二十第四項において準用する一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第百十三条第一項の評議員会
三 第四十五条の三十六第一項の評議員会
四 第四十六条第一項第一号の評議員会
五 第五十二条、第五十四条の二第一項及び第五十四条の八の評議員会
8 前二項の決議について特別の利害関係を有する評議員は、議決に加わることができない。
(以下略)

決議事項の制限

評議員会は、評議員会の招集に際して理事会が定めた招集目的に関する事項以外には決議できません。

社会福祉法
(評議員会の運営)
第四十五条の九 1~8(略)
9 評議員会は、次項において準用する一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第百八十一条第一項第二号に掲げる事項以外の事項については、決議をすることができない。ただし、第四十五条の十九第六項において準用する同法第百九条第二項の会計監査人の出席を求めることについては、この限りでない。
(以下略)

一般社団法人及び一般財団法人に関する法律
(評議員会の招集の決定)
第百八十一条 評議員会を招集する場合には、理事会の決議によって、次に掲げる事項を定めなければならない。
一 評議員会の日時及び場所
二 評議員会の目的である事項があるときは、当該事項
三 前二号に掲げるもののほか、法務省令で定める事項
2 前項の規定にかかわらず、前条第二項の規定により評議員が評議員会を招集する場合には、当該評議員は、前項各号に掲げる事項を定めなければならない。

評議員会は、議決権の行使について、書面等による決議や代理人による決議は認められません。

ただし、議決に加わることのできる評議員全員が書面または電磁的記録により同意の意思表示をしたときは、当該提案を可決することの評議員会の決議があったものとみなされます。(これを「決議の省略」といいます)

評議員会の議事録

評議員会は議事録を作成する必要があります。

評議員会議事録に記載する必要がある事項は、社会福祉法に定められています。

①評議員会の開催日時・場所(テレビ会議等により、開催場所にいない評議員、理事、監事、会計監査人が評議員会に出席した場合には、その出席方法を含む)

②評議員会の議事の経過の要領、その結果

③決議を要する事項について、特別の利害関係を有する評議員があるときは、その評議員の氏名

④監事や会計監査人(辞任者を含む)が、法律に基づく意見・発言をしたときの、その意見・発言の内容

⑤評議員会に出席した評議員、理事、監事、会計監査人の氏名・名称

⑥評議員会に議長があるときは、議長の氏名

⑦議事録の作成に係る職務を行った者の氏名

まとめ

この記事のまとめ

〇評議員会の性質
法人の運営に関する意思決定の最高機関にあたり、必置の機関です。
法人の運営に関する重要事項について、評議員の評決で決定します。

〇決議事項
主な決議事項については、社会福祉法に規定があります。
厚生労働省が作成した「社会福祉法人定款例」にも盛り込まれています。
決議には「普通決議」と「特別決議」があります。
・普通決議…過半数以上の評議員が出席し、その過半数以上による決議
・特別決議…2/3以上の評議員による決議
招集目的に係る決議のほかは決議できません。

〇評議員会の運営上の特徴
評議員会は、評議員のすべてによって組織されます。
法律に規定する事項や、定款で定めた事項に限り、決議できます。
評決すべき事項について、理事や理事会などの他の機関に委ねることはできません。

〇評議員会の運営
評議員会は、必要があれば、いつでも招集できます。
会計年度の終了後には、定時の評議員会を招集する必要があります。
原則、理事が招集します。例外的に理事が招集しない場合には評議員が招集できます。
書面や代理人による決議の禁止。ただし、評議員全員が書面や電磁的記録によって同意をする場合は、決議があったものとみなします。
所定の事項を記載した議事録を作成する必要があります。

この記事を書いた人
行政書士上田

法務省、内閣官房、復興庁での勤務を経て、行政書士・社会福祉士として開業。 14年間、公務員として福祉分野などに関わってきた経験を生かして、許認可申請と生活相談を専門とした行政書士・社会福祉士として、お客様の事業や生活を支援しています。

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