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社会福祉法人とは

社会福祉事業

社会福祉法人とは、社会福祉法に基づいて、社会福祉事業を行うことを目的として設立された法人のことをいいます。

一般的には、障害者や高齢者などを対象とした福祉施設や、保育園、さらには病院や診療所などの医療機関の運営主体となっている法人と考えて差し支えありません。

この記事では、社会福祉法人の概要について説明します。

社会福祉法人の役割

社会福祉法は、社会福祉法人について、次のとおり定めています。

社会福祉法
(定義)
第二十二条 この法律において「社会福祉法人」とは、社会福祉事業を行うことを目的として、この法律の定めるところにより設立された法人をいう。

社会福祉法人は、社会福祉事業の運営主体として、社会福祉の中心的な担い手として活躍することが期待されている存在といえます。

また、社会福祉法の目的である「福祉サービスの利用者の利益の保護」や「地域福祉」に貢献していくことが求められているといえます。

参考:社会福祉法の目的とは

社会福祉法は、その冒頭で、この法律の目的を次のとおり定めています。

社会福祉法
(目的)
第一条 この法律は、社会福祉を目的とする事業の全分野における共通的基本事項を定め、社会福祉を目的とする他の法律と相まつて、福祉サービスの利用者の利益の保護及び地域における社会福祉(以下「地域福祉」という。)の推進を図るとともに、社会福祉事業の公明かつ適正な実施の確保及び社会福祉を目的とする事業の健全な発達を図り、もつて社会福祉の増進に資することを目的とする。
以上のとおり、同法は「社会福祉の増進に資すること」を目的としています。
また、目的を達成する方法として、次の4点を挙げています。
①福祉サービスの利用者の利益の保護
②地域福祉の推進
③社会福祉事業の公明かつ適正な実施の確保
④社会福祉を目的とする事業の健全な発達

社会福祉法人の特徴

社会福祉法人は、「福祉サービスの利用者(一般的には社会的弱者にあたる人)」のために、社会福祉事業という、公益性のある非営利の事業を行う法人です。

その性質上、「公益法人」と同様の特徴がある法人と考えられます。

参考:公益法人とは?

公益法人とは、公益目的で活動する社団法人や財団法人のことです。
「公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律」に定めがあります。

公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律
(定義)
第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
一 公益社団法人 第四条の認定を受けた一般社団法人をいう。
二 公益財団法人 第四条の認定を受けた一般財団法人をいう。
三 公益法人 公益社団法人又は公益財団法人をいう。
四 公益目的事業 学術、技芸、慈善その他の公益に関する別表各号に掲げる種類の事業であって、不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与するものをいう。
(略)
(公益認定)
第四条 公益目的事業を行う一般社団法人又は一般財団法人は、行政庁の認定を受けることができる。

また、公益法人については、同法の前身といえる旧民法の第34条では、次のとおり定めていました。

旧民法
(公益法人の設立)
第三十四条 学術、技芸、慈善、祭祀、宗教その他の公益に関する社団又は財団であつて、営利を目的としないものは、主務官庁の許可を得て、法人とすることができる。
旧民法では、この規定によって、公益に関する社団又は財団であって、営利を目的としないもので、主務官庁が設立を許可した社団法人や財団法人を「公益法人」と呼んでいました。

したがって、社会福祉法人は、公益法人と同様に、所轄庁(国や地方自治体)の認可を受けることで、設立することができるものとされています。

社会福祉法人は、行政による監督下での事業運営が前提となっている法人といえます。

所轄庁が、規制・監督と、支援・助成を、一体的に行うことで、安定的な事業の運営を確保するための仕組みを制度化しています。

規制・監督 ・定款の認可
・基本財産の処分の承認
・報告、指導監査、勧告、行政処分
・収益や資金の使途を制限
・解散時の残余財産の帰属先を制限
支援・助成 ・非課税措置
(法人税、登録免許税、固定資産税等)
・補助金の交付
(施設整備費、運営費)
・退職手当共済制度の公費負担
・法人への寄附者に対する税額控除

社会福祉法人の経営の原則

社会福祉法人は、社会福祉事業という、公益かつ非営利の事業を行う法人です。

よって、その経営は「公益性」と「非営利性」という2つの特徴を踏まえたものとなります。
また、事業の性質上、経営の「安定性」が求められます。

これらの特徴は、 社会福祉法人に適用されるいろいろなルールに、次のとおり反映されています。

公益性 社会福祉事業を行うことを目次の事業は、社会福祉事業と内容が同じ場合でも、社会福祉事業として扱いません。的とする
非営利性 ・設立時の寄附者の持分は認められない
・事業の利益を構成員へ分配しない
・事業の利益は事業の継続発展のために使用
・役員等の関係者への特別な利益供与の禁止
・法人解散時の残余財産は、
 社会福祉法人や社会福祉事業を行うもの、または国庫に帰属
安定性 優遇措置により事業の継続性を確保

これらのルールがあることから、社会福祉法人を設立・運営するにあたっては、公益性・非営利性・安定性を踏まえることが基本となります。

また、社会福祉法では、社会福祉法人の経営の原則として、次のとおり定めています。

社会福祉法
(経営の原則等)
第二十四条 社会福祉法人は、社会福祉事業の主たる担い手としてふさわしい事業を確実、効果的かつ適正に行うため、自主的にその経営基盤の強化を図るとともに、その提供する福祉サービスの質の向上及び事業経営の透明性の確保を図らなければならない。
(略)

よって、社会福祉法人は、自主的に、次の点を踏まえた経営することが求められています。
・経営基盤の強化
・提供する福祉サービスの質の向上
・事業経営の透明性の確保

加えて、社会福祉法人が、社会福祉事業や公益事業(後述)をするにあたっては、非営利性が求められています。

社会福祉法
(経営の原則等)
第二十四条(略)
2 社会福祉法人は、社会福祉事業及び第二十六条第一項に規定する公益事業を行うに当たつては、日常生活又は社会生活上の支援を必要とする者に対して、無料又は低額な料金で、福祉サービスを積極的に提供するよう努めなければならない。

社会福祉事業とは

社会福祉法人は「社会福祉事業」を行うことを目的とする法人です。

その法人の主たる目的となる事業に「社会福祉事業」が含まれない場合は、その法人を社会福祉法人として設立・運営できません。

社会福祉事業についても、社会福祉法に定めがあります。

社会福祉法
(定義)
第二条 この法律において「社会福祉事業」とは、第一種社会福祉事業及び第二種社会福祉事業をいう。
(以下略)

社会福祉事業は、おおきくは「第1種社会福祉事業」と「第2種社会福祉事業」に分かれます。

第1種社会福祉事業とは

第1種社会福祉事業は、事業の性質から、利用者の保護の必要性が高い事業のことをいいます。

おおまかに言えば、もっぱら入所サービスに関係する事業があてはまります。

その事業内容は、様々な法律に根拠があり、国や地方自治体が実施している事業も含まれています。民間では、原則として、社会福祉法人だけが実施している事業もあります。

詳しくは、こちらの記事を参考にしてください。

第2種社会福祉事業とは

第2種社会福祉事業は、事業の性質から、比較的に利用者への影響が小さいため、公的規制の必要性が低い事業のことをいいます。

おおまかに言えば、もっぱら在宅サービスに関係する事業があてはまります。

その事業内容は、多岐にわたります。社会福祉法人に限らず、NPO法人や株式会社も参入しています。

詳しくは、こちらの記事を参考にしてください。

参考:社会福祉事業の適用除外事業(社会福祉士法第2条第4項)

次の事業は、社会福祉事業と内容が同じ場合でも、社会福祉事業として扱いません。

①実施期間が6月(連絡助成事業にあっては3月)を超えない事業

②社会福祉法第2条第2項に掲げる事業のすべてと、社会福祉法第2条第3項第1号から第9号までに掲げる事業について、常時保護を受ける者が、次の人数に満たないもの
・入所させて保護を行うものにあっては5人
・その他のものにあっては20人(政令で定める事業にあっては10人)に満たないもの

③社会福祉法第2条第3項第13号に定める社会福祉事業の助成を行うものであって、次のいずれかに該当するもの
・助成金額が毎年度500万円に満たないもの
・助成を受ける社会福祉事業の数が毎年度50に満たないもの

④社団や組合が行う事業であって、社員や組合員のためにするもの

⑤更生保護事業法に規定する更生保護事業

公益事業と収益事業

社会福祉法人は、社会福祉事業に支障がない限り、必要に応じて「公益事業」や「収益事業」を行うことができます。

社会福祉法
(公益事業及び収益事業)
第二十六条 社会福祉法人は、その経営する社会福祉事業に支障がない限り、公益を目的とする事業(以下「公益事業」という。)又はその収益を社会福祉事業若しくは公益事業(第二条第四項第四号に掲げる事業その他の政令で定めるものに限る。第五十七条第二号において同じ。)の経営に充てることを目的とする事業(以下「収益事業」という。)を行うことができる。
2 公益事業又は収益事業に関する会計は、それぞれ当該社会福祉法人の行う社会福祉事業に関する会計から区分し、特別の会計として経理しなければならない。

公益事業や収益事業については、こちらの記事を参考にしてください。

公益事業や収益事業は「社会福祉事業に支障がない限り」において行うことができるものです。

つまり、主たる事業である社会福祉事業に対して、従たる地位にある事業と考えられます。

よって、年間事業費や規模において、主たる事業である社会福祉事業の額を超える事業運営はできないことになっています。

参考:公益事業と収益事業の停止について
公益事業や収益事業は、以下の条文に該当した場合、所轄庁の命令によって停止されることがあります。
社会福祉法
(公益事業又は収益事業の停止)
第五十七条 所轄庁は、第二十六条第一項の規定により公益事業又は収益事業を行う社会福祉法人につき、次の各号のいずれかに該当する事由があると認めるときは、当該社会福祉法人に対して、その事業の停止を命ずることができる。
一 当該社会福祉法人が定款で定められた事業以外の事業を行うこと。
二 当該社会福祉法人が当該収益事業から生じた収益を当該社会福祉法人の行う社会福祉事業及び公益事業以外の目的に使用すること。
三 当該公益事業又は収益事業の継続が当該社会福祉法人の行う社会福祉事業に支障があること。

社会福祉法人の経営組織

社会福祉法人は、その公益性や非営利性、安定性を確保するために、法人の経営組織に相互牽制体制を取り入れ、ガバナンスの強化がはかられています。

社会福祉法人の経営組織は、もっぱら次の機関で構成されています。

①法人の経営方針を決定する「評議員会」
②法人の運営業務を執行する理事会
③法人の経営や運営業務を監査する監事・会計監査人
※このほか、定款で「評議員選任・解任委員会」の設置も可能

法人の経営組織を分割し、相互に牽制させることで、特定者の専横を予防し、もって公益性や非営利性、安定性を確保する仕組みになっています。

社会福祉法人の経営組織については、こちらの記事を参考にしてください。

まとめ

この記事のまとめ

社会福祉法人は、社会福祉法に基づいて、社会福祉事業を行うことを目的として設立された法人です。

社会福祉法人は、その公益性から、所轄庁(国や地方自治体)の認可を受けることで設立することができます。

社会福祉法人は「社会福祉事業」を行うことを目的とします。
このほか、副次的に、公益事業や収益事業もできます。
社会福祉事業には、第1種(入所サービス)と第2種(在宅サービス)があります。

社会福祉法人は、その公益性や非営利性、安定性を確保するために、経営組織に相互牽制体制を取り入れており、もっぱら次の機関で構成されます。
①法人の経営方針を決定する「評議員会」
②法人の運営業務を執行する「理事会」
③法人の経営や運営業務を監査する「監事・会計監査人」 
※このほか、定款で「評議員選任・解任委員会」の設置も可能

この記事を書いた人
行政書士上田

法務省、内閣官房、復興庁での勤務を経て、行政書士・社会福祉士として開業。 14年間、公務員として福祉分野などに関わってきた経験を生かして、許認可申請と生活相談を専門とした行政書士・社会福祉士として、お客様の事業や生活を支援しています。

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