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社会福祉法人の「会計監査人」とは

社会福祉事業

社会福祉法人の会計監査人とは、法人経営のガバナンスの強化や、事業運営の透明性の向上のため、一定規模を超える社会福祉法人に設置が義務付けられている外部監査機関です。公認会計士や監査法人が会計監査人となって、計算書類等の監査を行います。

この記事では、社会福祉法人の会計監査人について説明します。

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会計監査人は定款の定めにより設置できる

社会福祉法人の会計監査人については、社会福祉法に定めがあります。

(機関の設置)
第三十六条 (略)
2 社会福祉法人は、定款の定めによつて、会計監査人を置くことができる。

昭和二十六年法律第四十五号
社会福祉法

社会福祉法人は、定款に定めることで、会計検査人を置くことができますが、必ず置かなければならないものではありません。(任意による設置になります)

なお、会計監査人を置いていない社会福祉法人であっても、実務上は、顧問の会計士や税理士が財務諸表の作成や税務などを担当していることが一般的です。

また、必置機関である監事の中に、会計士や税理士が含まれていることが一般的です。

よって、会計監査人を設置していない法人でも、会計・税務の専門家を活用して、会計監査に準じた指導を受けるなどして、会計事故の未然防止や適正な計算書類の作成に努めているといえます。

それでは、あえて会計監査人を置くことにより期待できる効果としては、何があるのでしょうか。

会計監査人による会計監査で期待できる効果

会計監査人による会計監査の効果として、厚生労働省は次のような効果があるとしています。

多くの法人で、会計監査により会計処理の誤りが発見されて、計算書類の承認前に修正をしています。適正な財務報告に向け、改善されていることが判明しました。
(略)
平成28年度に任意で会計監査を受けている法人、受けていない法人で、誤りの発生割合と修正額を比較したところ、顕著な差がありました。平成28年度は任意になりますが、会計監査のアプローチが適正な財務報告に有効であることを示しています。
(略)

厚生労働省 令和元年8月30日「社会福祉法人の会計監査人に関するアンケート結果」

上記のアンケート結果では、そのほかにも、次のような効果があるとしています。
・社会福祉法人のガバナンス機能の強化
・効果的・効率的な法人運営のための環境整備
・役員・職員等のコンプライアンス意識の向上
・会計処理・計算書類の適正化
・情報開示に対する説明責任・信頼性の向上
・不正の発見、不正の抑止力
・法人の内部規程の整備や業務処理の統一化、業務改善
・コンサルティング的なサービスの提供
・役員や職員等の学習機会になる

以上のとおり、会計監査人による会計監査は、会計上の誤りや事故に対して有効であるだけでなく、法人の業務運営全体にとって有益な効果があるといえます。

法人規模別の会計監査実施状況

会計監査人による会計監査は、どのくらい実施されているのでしょうか。

厚生労働省が、社会福祉法人(平成29年度に公認会計士または監査法人の会計監査を受けた社会福祉法人)に対して行ったアンケート結果(令和元年8月30日公表)によれば、有効回答数520法人が会計監査を受けており、うち205法人は任意で会計監査を実施しているとのことです。
(後述しますが、会計監査人が必置の「特定社会福祉法人」は会計監査の実施が義務となります)

このアンケートによれば、法人規模が大きくなるほど、任意による会計監査の実施割合が高くなっています。

比較すると、次のとおりです。(数字は平成28年度のもの)
下記の1から4のうち、2から4の法人が、任意で会計監査を実施した法人となります。

1 特定社会福祉法人(サービス活動収益30億円超または負債60億円超)
法人数 326
会計監査実施法人 315
実施割合 96.6%
※このグループは会計監査の実施が義務となります。

2 サービス活動収益20億円超または負債40億円超の法人から上記1を除いた法人
法人数 325
会計監査実施法人 34
実施割合 10.5%

3 サービス活動収益10億円超または負債20億円超の法人から上記1・2を除いた法人
法人数 1450
会計監査実施法人 51
実施割合 3.5%

4 上記①から③以外の法人(差分計算)
法人数 18553
会計監査実施法人 120
実施割合 0.6%

以上のとおり、会計監査は法人にとって有益な効果があるものの、その実施割合は高くはないといえるでしょう。

これまでに紹介した厚生労働省のアンケート結果によれば、会計監査の実施について、相応の費用負担や事務負担があることを回答している法人があります。

会計監査について、そうした負担感のあることが、法人の規模が小さくなるほど実施割合が小さくなることの理由のひとつかもしれません。

会計監査人の設置が必要となる法人

一定の規模を超える社会福祉法人は、会計監査人を置くことが義務付けられています。

この一定の規模を超える社会福祉法人のことを「特定社会福祉法人」といいます。

(会計監査人の設置義務)
第三十七条 特定社会福祉法人(その事業の規模が政令で定める基準を超える社会福祉法人をいう。第四十六条の五第三項において同じ。)は、会計監査人を置かなければならない。

昭和二十六年法律第四十五号
社会福祉法

「一定規模を超える」とは、最終会計年度の決算において、収益30億円または負債60億円を超える場合をいいます。

具体的には、次の1または2に該当する法人が、特定社会福祉法人になります。

1 前年度決算の法人単位事業活動計算書のサービス活動収益が30億円を超える法人

2 法人単位貸借対照表の負債が60億円を超える法人

これらの条件については、社会福祉施行令に定められています。

(特定社会福祉法人等の基準)
第十三条の三 法第三十七条及び第四十五条の十三第五項の政令で定める基準を超える社会福祉法人は、次の各号のいずれかに該当する社会福祉法人とする。
一 最終会計年度(各会計年度に係る法第四十五条の二十七第二項に規定する計算書類につき法第四十五条の三十第二項の承認(法第四十五条の三十一前段に規定する場合にあつては、法第四十五条の二十八第三項の承認)を受けた場合における当該各会計年度のうち最も遅いものをいう。以下この条において同じ。)に係る法第四十五条の三十第二項の承認を受けた収支計算書(法第四十五条の三十一前段に規定する場合にあつては、同条の規定により定時評議員会に報告された収支計算書)に基づいて最終会計年度における社会福祉事業並びに法第二十六条第一項に規定する公益事業及び同項に規定する収益事業による経常的な収益の額として厚生労働省令で定めるところにより計算した額が三十億円を超えること。
二 最終会計年度に係る法第四十五条の三十第二項の承認を受けた貸借対照表(法第四十五条の三十一前段に規定する場合にあつては、同条の規定により定時評議員会に報告された貸借対照表とし、社会福祉法人の成立後最初の定時評議員会までの間においては、法第四十五条の二十七第一項の貸借対照表とする。)の負債の部に計上した額の合計額が六十億円を超えること。

昭和三十三年政令第百八十五号
社会福祉法施行令

会計監査人の資格

会計監査人は、公認会計士または監査法人でなければならないとされています。

(会計監査人の資格等)
第四十五条の二 会計監査人は、公認会計士(外国公認会計士(公認会計士法(昭和二十三年法律第百三号)第十六条の二第五項に規定する外国公認会計士をいう。)を含む。以下同じ。)又は監査法人でなければならない。
2 会計監査人に選任された監査法人は、その社員の中から会計監査人の職務を行うべき者を選定し、これを社会福祉法人に通知しなければならない。
3 公認会計士法の規定により、計算書類(第四十五条の二十七第二項に規定する計算書類をいう。第四十五条の十九第一項及び第四十五条の二十一第二項第一号イにおいて同じ。)について監査をすることができない者は、会計監査人となることができない。

昭和二十六年法律第四十五号
社会福祉法

また、会計監査人は、会計監査人を置く社会福祉法人の理事、監事、職員、さらには、その法人から継続的な報酬を受けている者(顧問など)を使用できません。

第四十五条の十九 (略)
5 会計監査人は、その職務を行うに当たつては、次のいずれかに該当する者を使用してはならない。
一 第四十五条の二第三項に規定する者
二 理事、監事又は当該会計監査人設置社会福祉法人の職員である者
三 会計監査人設置社会福祉法人から公認会計士又は監査法人の業務以外の業務により継続的な報酬を受けている者
(略)

昭和二十六年法律第四十五号
社会福祉法

会計監査人の選任・解任

会計監査人も、役員同様に、評議員会で選任・解任します。

また、選任・解任については、監事の過半数による決定も必要です。

(役員等の選任)
第四十三条 役員及び会計監査人は、評議員会の決議によつて選任する。
2 前項の決議をする場合には、厚生労働省令で定めるところにより、この法律又は定款で定めた役員の員数を欠くこととなるときに備えて補欠の役員を選任することができる。
3 一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第七十二条、第七十三条第一項及び第七十四条の規定は、社会福祉法人について準用する。この場合において、同法第七十二条及び第七十三条第一項中「社員総会」とあるのは「評議員会」と、同項中「監事が」とあるのは「監事の過半数をもって」と、同法第七十四条中「社員総会」とあるのは「評議員会」と読み替えるものとするほか、必要な技術的読替えは、政令で定める。

昭和二十六年法律第四十五号
社会福祉法

(会計監査人の選任等に関する議案の内容の決定)
第七十三条 監事設置一般社団法人においては、社員総会に提出する会計監査人の選任及び解任並びに会計監査人を再任しないことに関する議案の内容は、監事が決定する。
2 監事が二人以上ある場合における前項の規定の適用については、同項中「監事が」とあるのは、「監事の過半数をもって」とする。

平成十八年法律第四十八号
一般社団法人及び一般財団法人に関する法律

このほか、会計監査人が一定の条件に該当したときは、監事全員の同意による会計監査人の解任もできます。

(監事による会計監査人の解任)
第四十五条の五 監事は、会計監査人が次のいずれかに該当するときは、当該会計監査人を解任することができる。
一 職務上の義務に違反し、又は職務を怠つたとき。
二 会計監査人としてふさわしくない非行があつたとき。
三 心身の故障のため、職務の執行に支障があり、又はこれに堪えないとき。
2 前項の規定による解任は、監事の全員の同意によつて行わなければならない。
3 第一項の規定により会計監査人を解任したときは、監事の互選によつて定めた監事は、その旨及び解任の理由を解任後最初に招集される評議員会に報告しなければならない。

昭和二十六年法律第四十五号
社会福祉法

会計監査人の任期

会計監査人の任期は、選任後1年以内に終了する会計年度のうち、最終のものに関する定時評議員会の終結の時までです。

(会計監査人の任期)
第四十五条の三 会計監査人の任期は、選任後一年以内に終了する会計年度のうち最終のものに関する定時評議員会の終結の時までとする。
2 会計監査人は、前項の定時評議員会において別段の決議がされなかつたときは、当該定時評議員会において再任されたものとみなす。
3 前二項の規定にかかわらず、会計監査人設置社会福祉法人が会計監査人を置く旨の定款の定めを廃止する定款の変更をした場合には、会計監査人の任期は、当該定款の変更の効力が生じた時に満了する。

昭和二十六年法律第四十五号
社会福祉法

会計監査人の職務

会計監査人は、社会福祉法の第六章第四節に定める社会福祉法人の会計処理について、監査を実施し、会計監査報告を作成します。

第四十五条の十九 会計監査人は、次節の定めるところにより、社会福祉法人の計算書類及びその附属明細書を監査する。この場合において、会計監査人は、厚生労働省令で定めるところにより、会計監査報告を作成しなければならない。
2 会計監査人は、前項の規定によるもののほか、財産目録その他の厚生労働省令で定める書類を監査する。この場合において、会計監査人は、会計監査報告に当該監査の結果を併せて記載し、又は記録しなければならない。
3 会計監査人は、いつでも、次に掲げるものの閲覧及び謄写をし、又は理事及び当該会計監査人設置社会福祉法人の職員に対し、会計に関する報告を求めることができる。
一 会計帳簿又はこれに関する資料が書面をもつて作成されているときは、当該書面
二 会計帳簿又はこれに関する資料が電磁的記録をもつて作成されているときは、当該電磁的記録に記録された事項を厚生労働省令で定める方法により表示したもの
4 会計監査人は、その職務を行うため必要があるときは、会計監査人設置社会福祉法人の業務及び財産の状況の調査をすることができる。
5 会計監査人は、その職務を行うに当たつては、次のいずれかに該当する者を使用してはならない。
一 第四十五条の二第三項に規定する者
二 理事、監事又は当該会計監査人設置社会福祉法人の職員である者
三 会計監査人設置社会福祉法人から公認会計士又は監査法人の業務以外の業務により継続的な報酬を受けている者
6 一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第百八条から第百十条までの規定は、会計監査人について準用する。この場合において、同法第百九条(見出しを含む。)中「定時社員総会」とあるのは、「定時評議員会」と読み替えるものとするほか、必要な技術的読替えは、政令で定める。

昭和二十六年法律第四十五号
社会福祉法

このほか、会計監査人は、不正行為等を発見した場合ときには、監事に報告する義務があります。

(監事に対する報告)
第百八条 会計監査人は、その職務を行うに際して理事の職務の執行に関し不正の行為又は法令若しくは定款に違反する重大な事実があることを発見したときは、遅滞なく、これを監事に報告しなければならない。
2 監事は、その職務を行うため必要があるときは、会計監査人に対し、その監査に関する報告を求めることができる。

平成十八年法律第四十八号
一般社団法人及び一般財団法人に関する法律

また、会計監査人は、定時評議員会に出席し、意見を述べることができます。
定時評議員会から出席を求められた場合には、出席して意見を述べる義務があります。

(定時社員総会における会計監査人の意見の陳述)
第百九条 第百七条第一項に規定する書類が法令又は定款に適合するかどうかについて会計監査人が監事と意見を異にするときは、会計監査人(会計監査人が監査法人である場合にあっては、その職務を行うべき社員。次項において同じ。)は、定時社員総会に出席して意見を述べることができる。
2 定時社員総会において会計監査人の出席を求める決議があったときは、会計監査人は、定時社員総会に出席して意見を述べなければならない。

平成十八年法律第四十八号
一般社団法人及び一般財団法人に関する法律

会計監査人の報酬を定める場合には、監事の過半数以上の同意が必要です。

(会計監査人の報酬等の決定に関する監事の関与)
第百十条 理事は、会計監査人又は一時会計監査人の職務を行うべき者の報酬等を定める場合には、監事(監事が二人以上ある場合にあっては、その過半数)の同意を得なければならない。

平成十八年法律第四十八号
一般社団法人及び一般財団法人に関する法律

会計監査人の監査を受けた計算書類等は、理事会の承認を受けなければいけません。

会計監査人を置く法人では、計算書類等は、理事会の承認を受ける前に、監事と会計監査人による二重の監査を受けることになります。

ただし、会計監査人による計算書類等の監査が適正に行われているときは、監事は計算書類等の監査を省略できます。

まとめ

この記事のまとめ

会計監査人は、法人経営のガバナンスの強化や、事業運営の透明性の向上のため、一定規模を超える社会福祉法人に設置が義務付けられている外部監査機関です。

最終会計年度の決算において、収益30億円または負債60億円を超える社会福祉法人は、会計監査人の設置義務があります。

会計監査人は、公認会計士または監査法人でなければなりません。

会計監査人は、評議員会で選任・解任します。
このとき、監事の過半数による決定が必要です。
このほか、監事全員の同意による会計監査人の解任もできます。

会計監査人の任期は、選任後1年以内に終了する会計年度のうち、最終のものに関する定時評議員会の終結の時までです。

会計監査人は、社会福祉法人の会計処理について、監査を実施し、会計監査報告を作成します。

会計監査人の監査を受けた計算書類等は、理事会の承認を受けなければいけません。

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この記事を書いた人
行政書士上田

法務省、内閣官房、復興庁での勤務を経て、行政書士・社会福祉士として開業。 14年間、公務員として福祉分野などに関わってきた経験を生かして、許認可申請と生活相談を専門とした行政書士・社会福祉士として、お客様の事業や生活を支援しています。

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