社会福祉法に定める「社会福祉事業」は、おおきく分けると「第1種社会福祉事業」と「第2種社会福祉事業」に分かれます。
この記事では、第1種社会福祉事業の事業内容について説明します。
第1種社会福祉事業は、主に入所サービスの事業が該当します
第1種社会福祉事業は、事業の性質から、利用者の保護の必要性が高い事業のことをいいます。
おおまかに言えば、もっぱら入所サービスに関係する事業があてはまります。
これらの事業は、利用者に与える影響が大きいため、経営安定が強く求められます。
よって、社会福祉法では、第1種社会福祉事業の経営主体を限定しています。
第1種社会福祉事業の経営主体は限定されています
民間団体で事業を行えるのは、原則として、社会福祉法人のみです。
社会福祉法
(経営主体)
第六十条 社会福祉事業のうち、第一種社会福祉事業は、国、地方公共団体又は社会福祉法人が経営することを原則とする。
社会福祉法人が、施設を設置して第1種社会福祉事業を経営しようとするときは、都道府県知事等への届出が必要になります。
他方、社会福祉法人ではない者が、施設を設置して第1種社会福祉事業を経営しようとするときは、都道府県知事等の許可が必要になります。(審査が厳しいということです)
なお、個別法により、第1種社会福祉事業のうち、保護施設や養護老人ホーム、特別養護老人ホームは、国や地方公共団体、社会福祉法人だけが経営主体になれます。
第1種社会福祉事業の事業内容
どのような事業が、第1種社会福祉事業に該当するのかについては、具体的には、社会福祉法第2条第2項に列挙されています。
社会福祉法
(定義)
(略)
2 次に掲げる事業を第一種社会福祉事業とする。
一 生活保護法(昭和二十五年法律第百四十四号)に規定する救護施設、更生施設その他生計困難者を無料又は低額な料金で入所させて生活の扶助を行うことを目的とする施設を経営する事業及び生計困難者に対して助葬を行う事業
二 児童福祉法(昭和二十二年法律第百六十四号)に規定する乳児院、母子生活支援施設、児童養護施設、障害児入所施設、児童心理治療施設又は児童自立支援施設を経営する事業
三 老人福祉法(昭和三十八年法律第百三十三号)に規定する養護老人ホーム、特別養護老人ホーム又は軽費老人ホームを経営する事業
四 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成十七年法律第百二十三号)に規定する障害者支援施設を経営する事業
五 削除
六 売春防止法(昭和三十一年法律第百十八号)に規定する婦人保護施設を経営する事業
七 授産施設を経営する事業及び生計困難者に対して無利子又は低利で資金を融通する事業
(以下略)
事業の根拠になる法律ごとにまとめると、次のとおりです。
生活保護法に規定する事業(社会福祉法第2条第2項第1号)
・救護施設(生活保護法第38条第2項)
身体上または精神上に著しい障害があるために日常生活を営むことが困難な要保護者を入所させて、生活扶助を行うことを目的とする施設
・更生施設(同法第38条第3項)
身体上または精神上の理由により、養護および生活指導を必要とする要保護者を入所させて、生活扶助を行うことを目的とする施設
・医療保護施設(同法第38条第4項)
医療を必要とする要保護者に対して、医療の給付を行うことを目的とする施設
・授産施設(同法第38条第5項)
身体上や精神上の理由、または世帯の事情により、就業能力の限られている要保護者に対して、就労または技能の修得のために必要な機会や便宜を与えて、その自立を助長することを目的とする施設
・宿所提供施設(同法第38条第6項)
住居のない要保護者の世帯に対して、住宅扶助を行うことを目的とする施設
・助葬事業
生計困難者に対して助葬を行う事業
児童福祉法に規定する事業(社会福祉法第2条第2項第2号)
・乳児院(児童福祉法第37条)
乳児(満1歳に満たない者)や幼児(保健上その他の理由により特に必要のある場合のみ。おおむね2歳未満)を入院させて、これを養育することを目的とする施設
・母子生活支援施設(同法第38条)
配偶者のいない女子や、これに準ずる事情にある女子、その者の監護すべき児童を入所させて、これらの者を保護するとともに、これらの者の自立の促進のためにその生活を支援することを目的とする施設
・児童養護施設(同法第41条)
乳児を除いて、保護者のない児童、虐待されている児童その他環境上養護を要する児童を入所させて、これを養護し、あわせてその自立を支援することを目的とする施設
・障害児入所施設(同法第42条第1項)
障害児を入所させて、下記の支援を行うことを目的とする施設
①福祉型障害児入所施設
保護、日常生活の指導及び独立自活に必要な知識技能の付与
②医療型障害児入所施設
保護、日常生活の指導、独立自活に必要な知識技能の付与及び治療
・児童心理治療施設(同法第43条の2)
家庭環境、学校における交友関係その他の環境上の理由により社会生活への適応が困難となった児童を、短期間、入所させ、または保護者の下から通わせて、社会生活に適応するために必要な心理に関する治療及び生活指導を主として行い、あわせて退所した者について相談その他の援助を行うことを目的とする施設
・児童自立支援施設(同法第44条)
不良行為をなし、または、なすおそれのある児童や、家庭環境その他の環境上の理由により生活指導等を要する児童を入所させ、または保護者の下から通わせて、個々の児童の状況に応じて必要な指導を行い、その自立を支援することを目的とする施設
老人福祉法に規定する事業(社会福祉法第2条第2項第3号)
・養護老人ホーム(老人福祉法第20条の4)
65歳以上の者であって、環境上の理由及び経済的理由により居宅において養護を受けることが困難なものを、市町村による措置に基づき入所させ、養護することを目的とする施設
・特別養護老人ホーム(同法第20条の5)
介護保険法の規定による介護老人福祉施設サービスに係る施設介護サービス費の支給に係る者、または生活保護法の規定による介護老人福祉施設サービスに係る介護扶助に係る者を入所させ、または市町村による措置に基づき、身体上または精神上著しい障害があるために常時介護を必要とし、かつ、居宅において常時介護を受けることが困難であり、やむを得ない事由により介護保険法に規定する介護老人福祉施設に入所することが著しく困難であると認められる65歳以上の者を入所させ、養護することを目的とする施設
・軽費老人ホーム(同法第20条の6)
無料または低額な料金で、老人を入所させ、食事の提供その他日常生活上必要な便宜を供与することを目的とする施設であって、老人デイサービスセンター、老人短期入所施設、養護老人ホーム、特別養護老人ホーム以外のもの
障害者総合支援法(障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律)に規定する事業(社会福祉法第2条第2項第4号)
・障害者支援施設(障害者総合支援法第5条第11項)
障害者につき、施設入所支援(主として夜間における、入浴、排せつ、食事の介護等の支援)を行うとともに、施設入所支援以外の施設障害福祉サービス(主として日中における、生活介護、就労継続支援等)を行う施設
売春防止法に規定する事業(社会福祉法第2条第2項第6号)
・婦人保護施設(売春防止法第36条)
要保護女子(性行または環境に照らして売春を行うおそれのある女子)を入所させて保護するた
めの施設
その他の事業(社会福祉法第2条第2項第7号)
・授産施設を経営する事業
・生計困難者に対して無利子または低利で資金を融通する事業
共同募金(社会福祉法第112~113条)
社会福祉法第2条に列挙されている事業のほかに、共同募金も第1種社会福祉事業になります。
社会福祉法
(共同募金)
第百十二条 この法律において「共同募金」とは、都道府県の区域を単位として、毎年一回、厚生労働大臣の定める期間内に限つてあまねく行う寄附金の募集であつて、その区域内における地域福祉の推進を図るため、その寄附金をその区域内において社会福祉事業、更生保護事業その他の社会福祉を目的とする事業を経営する者(国及び地方公共団体を除く。以下この節において同じ。)に配分することを目的とするものをいう。
(共同募金会)
第百十三条 共同募金を行う事業は、第二条の規定にかかわらず、第一種社会福祉事業とする。
2 共同募金事業を行うことを目的として設立される社会福祉法人を共同募金会と称する。
3 共同募金会以外の者は、共同募金事業を行つてはならない。
4 共同募金会及びその連合会以外の者は、その名称中に、「共同募金会」又はこれと紛らわしい文字を用いてはならない。
まとめ
第1種社会福祉事業は、入所サービスなど、利用者の保護の必要性が高い事業が該当します。
社会福祉法では、第1種社会福祉事業の経営主体を、国・地方自治体・社会福祉法人に限定しています。
第1種社会福祉事業は次のとおりです。
□ 生活保護法に規定する事業
■ 救護施設
■ 更生施設
■ 医療保護施設
■ 授産施設
■ 宿所提供施設
■ 生計困難者に対して助葬を行う事業
□ 児童福祉法に規定する事業
■ 乳児院
■ 母子生活支援施設
■ 児童養護施設
■ 障害児入所施設
■ 情緒障害児短期治療施設
■ 児童自立支援施設
□ 老人福祉法に規定する事業
■ 養護老人ホーム
■ 特別養護老人ホーム
■ 軽費老人ホーム
□ 障害者総合支援法に規定する事業
■ 障害者支援施設
□ 売春防止法に規定する事業
■ 婦人保護施設
□ その他の事業
■ 授産施設を経営する事業
■ 生計困難者に対して無利子又は低利で資金を融通する事業
□共同募金