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社会福祉法人の「理事」とは

社会福祉事業

社会福祉法人における「理事」は、法人の役員であり、業務執行をつかさどる「理事会」の構成員として、法人の業務執行を担います。

このことから、理事会を構成する理事は、社会福祉事業について理解があり、実際に法人運営の職責を果たせる人を選任する必要があります。

もちろん、法人の役員として、法令を遵守し、職務に精励する義務があります。

社会福祉法

(理事の職務及び権限等)
第四十五条の十六 理事は、法令及び定款を遵守し、社会福祉法人のため忠実にその職務を行わなければならない。

理事の選任

理事の選任については、社会福祉法に、次のとおり定めがあります。

社会福祉法

(役員の資格等)
第四十四条 第四十条第一項の規定は、役員について準用する。
2 監事は、理事又は当該社会福祉法人の職員を兼ねることができない。
3 理事は六人以上、監事は二人以上でなければならない。
4 理事のうちには、次に掲げる者が含まれなければならない。
一 社会福祉事業の経営に関する識見を有する者
二 当該社会福祉法人が行う事業の区域における福祉に関する実情に通じている者
三 当該社会福祉法人が施設を設置している場合にあつては、当該施設の管理者
5 監事のうちには、次に掲げる者が含まれなければならない。
一 社会福祉事業について識見を有する者
二 財務管理について識見を有する者
6 理事のうちには、各理事について、その配偶者若しくは三親等以内の親族その他各理事と厚生労働省令で定める特殊の関係がある者が三人を超えて含まれ、又は当該理事並びにその配偶者及び三親等以内の親族その他各理事と厚生労働省令で定める特殊の関係がある者が理事の総数の三分の一を超えて含まれることになつてはならない。
7 監事のうちには、各役員について、その配偶者又は三親等以内の親族その他各役員と厚生労働省令で定める特殊の関係がある者が含まれることになつてはならない。

以下、同法の定めについて、確認していきます。

理事の員数

理事の員数は、6名以上が必要です。

各理事について、その配偶者や、三親等以内の親族、その他の特殊関係者が、3人を超えて含まれてはなりません。

ある理事と、その配偶者、その三親等以内の親族、その他の特殊関係者が、理事総数の3分の1を超えて含まれてはなりません。

例)理事の員数が6名の場合、ある理事の特殊関係者は1名まで

理事の資格

理事には、次にあてはまる者が含まれなければなりません。

①社会福祉事業の経営に関する識見を有する者
(例)
・社会福祉に関する教育を行う者
・社会福祉に関する研究を行う者
・社会福祉事業又は社会福祉関係の行政に従事した経験を有する者
・公認会計士、税理士、弁護士等、社会福祉事業の経営を行う上で必要かつ有益な専門知識を有する者

②その事業の区域における福祉に関する実情に通じている者
(例)
・社会福祉協議会等の社会福祉事業を行う団体の役職員
・民生委員、児童委員
・社会福祉に関するボランティア団体、親の会等の民間社会福祉団体の代表者等
・医師、保健師、看護師等医療関係者
・自治会、町内会、婦人会、商店会等の役員や、その他にその者の参画により施設運営や在宅福祉事業の円滑な遂行が期待できる者

③施設を設置して管理している場合には、その施設の管理者(施設長等)

※その社会福祉法人の評議員、監事との兼務は認められません。

※関係行政庁の職員が社会福祉法人の理事になることは、社会福祉法第61条の第1項の公私分離の原則に照らし、適当ではありません。(社会福祉協議会及び社会福祉事業団は除く)

※また、実際に理事会に参画(出席)できない者を、理事として名目的に選任してはなりません。

欠格要件

理事は、評議員と同様の欠格要件があります。
この欠格要件にあてはまる人は、理事になれません。

社会福祉法

(役員の資格等)
第四十四条 第四十条第一項の規定は、役員について準用する。
(以下略)

(評議員の資格等)
第四十条 次に掲げる者は、評議員となることができない。
一 法人
二 成年被後見人又は被保佐人
三 生活保護法、児童福祉法、老人福祉法、身体障害者福祉法又はこの法律の規定に違反して刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなるまでの者
四 前号に該当する者を除くほか、禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなるまでの者
五 第五十六条第八項の規定による所轄庁の解散命令により解散を命ぜられた社会福祉法人の解散当時の役員

理事の欠格要件は、評議員のものと同じですので、評議員の記事も参考にしてください。

理事の選任・解任の方法

理事は、評議員会で選任・解任されます。

社会福祉法

(役員等の選任)
第四十三条 役員及び会計監査人は、評議員会の決議によつて選任する。
(以下略)

理事の任期について

理事の任期は、おおむね2年以内となります。

(役員の任期)
第四十五条 役員の任期は、選任後二年以内に終了する会計年度のうち最終のものに関する定時評議員会の終結の時までとする。ただし、定款によつて、その任期を短縮することを妨げない。

理事の任期は、選任後2年以内に終了する会計年度のうち、最終のものに関する定時評議員会の終結の時までとなります。(任期の起算日は就任日ではなく選任日です)

例1)平成30年3月10日に選任され、同年4月1 日に就任した場合
任期:平成30年3月10日から平成30年度決算に係る定時評議員会の日まで

例2)平成30年4月6日に選任され、同日に就任した場合
任期:平成30年4月6 日から平成31年度決算に係る定時評議員会の日まで

なお、定款の規定により2年未満に短縮することができます。

理事長・業務執行理事について

理事会において、理事の中から「理事長」や「業務執行理事」を選定・解職することができます。

理事長には、法人の代表権と、業務執行権があります。

業務執行理事には、業務執行権があります。

他方、理事長・業務執行理事ではない理事には、代表権や業務執行権がありません。

理事長・業務執行理事ではない理事は、理事会の構成員として、理事会における議決権の行使等を通じて、法人の業務執行の意思決定に参画するとともに、理事長や他の理事の職務の執行を監督する役割を担うこととなります。

理事長について

理事長は、法人を代表する理事として、代表権と業務執行権をもっています。

社会福祉法

(理事会の権限等)
第四十五条の十三 (略)
2 理事会は、次に掲げる職務を行う。
一~二(略)
三 理事長の選定及び解職
3 理事会は、理事の中から理事長一人を選定しなければならない。
(以下略)

(理事長の職務及び権限等)
第四十五条の十七 理事長は、社会福祉法人の業務に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する。
2 前項の権限に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない。
3 第四十五条の六第一項及び第二項並びに一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第七十八条及び第八十二条の規定は理事長について、同法第八十条の規定は民事保全法(平成元年法律第九十一号)第五十六条に規定する仮処分命令により選任された理事又は理事長の職務を代行する者について、それぞれ準用する。この場合において、第四十五条の六第一項中「この法律又は定款で定めた役員の員数が欠けた場合」とあるのは、「理事長が欠けた場合」と読み替えるものとする。

理事長は、法人を代表し、社会福祉法人の業務に関する裁判上または裁判外の一切の行為をする権限があります。いわば、会社における代表取締役のような存在といえます。

また、法人において、理事長の権限に、何らかの制限を加えたとしても、そのことを知らない第三者に対して、その制限があることを主張できません。

なお、社会福祉法人には、一般社団法人のルールが適用されることがあります。
これにより、社会福祉法人は、理事長の行為による損害賠償責任を負うことがあります。

一般社団法人及び一般財団法人に関する法律

(代表者の行為についての損害賠償責任)
第七十八条 一般社団法人は、代表理事その他の代表者がその職務を行うについて第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。

業務執行理事について

業務執行理事とは、理事長(代表理事)以外の理事で、理事会によって業務を執行する理事として選定された者をいいます。

業務執行理事がいる場合、業務執行について、理事会で方針を決議して、業務執行理事がその方針どおりに執行することになります。

なお、業務執行理事は、理事長とは異なり、代表権が無いので、対外的な業務を行うことはできません。

社会福祉法

(理事の職務及び権限等)
第四十五条の十六 理事は、法令及び定款を遵守し、社会福祉法人のため忠実にその職務を行わなければならない。
2 次に掲げる理事は、社会福祉法人の業務を執行する。
一 理事長
二 理事長以外の理事であつて、理事会の決議によつて社会福祉法人の業務を執行する理事として選定されたもの
(以下略)

理事長・業務執行理事の職務執行報告

理事長・業務執行理事は、自己の職務の執行状況を理事会に報告しなければなりません。

(理事の職務及び権限等)
第四十五条の十六 理事は、法令及び定款を遵守し、社会福祉法人のため忠実にその職務を行わなければならない。
2 次に掲げる理事は、社会福祉法人の業務を執行する。
一 理事長
二 理事長以外の理事であつて、理事会の決議によつて社会福祉法人の業務を執行する理事として選定されたもの
3 前項各号に掲げる理事は、三月に一回以上、自己の職務の執行の状況を理事会に報告しなければならない。ただし、定款で毎会計年度に四月を超える間隔で二回以上その報告をしなければならない旨を定めた場合は、この限りでない。
(以下略)

報告の頻度は、3か月に1回以上です。
なお、定款で、毎会計年度に4か月を超える間隔で2回以上とすることが可能です。

報告は、理事会を開催してすることが必要です。

例)3か月に1回以上の報告要件を満たすための理事会の開催回数
・6月、9月、12月、翌年3月の毎月10日に開催…年4回
・6月、9月、12月は各月10日、翌年3月は15日に開催
…要件を満たすためには12月15日から3月10日までの間にも1回開催し報告が必要

なお、この報告は省略できません。実際に理事会を開催し、報告することが必要です。

まとめ

この記事のまとめ

理事は、法人の役員であり、業務執行をつかさどる理事会の構成員として、法人の業務執行を担います。

理事の員数は、6名以上です。
理事の配偶者など、特定の理事の利害関係者が、3人を超えて含まれてはなりません。
また、その理事とあわせて、理事総数の3分の1を超えて含まれてはなりません。

理事は、評議員と同様の欠格要件があります。(成年後見人など)
この欠格要件にあてはまる人は、理事になれません。

理事には、次の者が含まれている必要があります。
①社会福祉事業の経営に関する識見を有する者
②その社会福祉法人が行う事業の区域における福祉の実情に通じている者
③その社会福祉法人が施設を設置している場合には、その施設の管理者

理事は、評議員会で、選任・解任されます。
任期は、おおむね2年です。

理事会において、理事の中から「理事長」や「業務執行理事」を選定・解職できます。
理事長には、法人の代表権と、業務執行権があります。
業務執行理事には、業務執行権があります。
両者は、業務の執行状況について、理事会への報告義務があります。

この記事を書いた人
行政書士上田

法務省、内閣官房、復興庁での勤務を経て、行政書士・社会福祉士として開業。 14年間、公務員として福祉分野などに関わってきた経験を生かして、許認可申請と生活相談を専門とした行政書士・社会福祉士として、お客様の事業や生活を支援しています。

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