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社会福祉法人における公益事業とは

社会福祉事業

社会福祉法人は、その主たる事業である社会福祉事業に支障がない限り、必要に応じて「公益事業」や「収益事業」を行うことができます。

社会福祉法
(公益事業及び収益事業)
第二十六条 社会福祉法人は、その経営する社会福祉事業に支障がない限り、公益を目的とする事業(以下「公益事業」という。)又はその収益を社会福祉事業若しくは公益事業(第二条第四項第四号に掲げる事業その他の政令で定めるものに限る。第五十七条第二号において同じ。)の経営に充てることを目的とする事業(以下「収益事業」という。)を行うことができる。
2 公益事業又は収益事業に関する会計は、それぞれ当該社会福祉法人の行う社会福祉事業に関する会計から区分し、特別の会計として経理しなければならない。

この記事では「公益事業」について説明します。

公益事業とは

社会福祉法人の公益事業とは、次の条件に該当する事業をいいます。

①公益を目的とする事業であって、社会福祉事業以外の事業であること。

②その事業を行うことにより、社会福祉事業の円滑な遂行を妨げるおそれのないものであること。

③その事業は、社会福祉事業に対し、従たる地位にあること。

④社会福祉と関係があること。

⑤公益事業に剰余金を生じたときは、その法人が行う社会福祉事業や公益事業に充てること。

公益事業の例

社会福祉法人の公益事業には、次のようなものが含まれます。
(社会福祉事業として行うものは除きます)

①必要な者に対して、相談、情報提供・助言、行政や福祉・保健・医療サービス事業者等との連絡調整を行う等の事業

②必要な者に対して、入浴、排せつ、食事、外出時の移動、コミュニケーション、スポーツ・文
化的活動、就労、住環境の調整等(以下「入浴等」という)を支援する事業

③入浴等の支援が必要な者、独力では住居の確保が困難な者等に対して、住居を提供または確保する事業

④日常生活を営むのに支障がある状態の軽減または悪化の防止に関する事業

⑤入所施設からの退院・退所を支援する事業

⑥子育て支援に関する事業

⑦福祉用具、その他の用具・機器、住環境に関する情報の収集・整理・提供に関する事業

⑧ボランティアの育成に関する事業

⑨社会福祉の増進に資する人材の育成・確保に関する事業
(社会福祉士・介護福祉士・精神保健福祉士・保育士・コミュニケーション支援者等の養成事業等)

⑩社会福祉に関する調査研究等

⑪社会福祉法第2条第4項第4号に掲げる事業
(その事業内容が、第1種社会福祉事業や、第2種社会福祉事業のうちの一部のものに該当するものの、いわゆる「事業規模要件」を満たさないために、社会福祉事業に含まれない事業)

社会福祉法
(定義)
第2条(略)
4 この法律における「社会福祉事業」には、次に掲げる事業は、含まれないものとする。
一~三(略)
四 第二項各号及び前項第一号から第九号までに掲げる事業であつて、常時保護を受ける者が、入所させて保護を行うものにあつては五人、その他のものにあつては二十人(政令で定めるものにあつては、十人)に満たないもの
(以下略)

⑫介護保険法に規定する居宅サービス事業、地域密着型サービス事業、介護予防サービス事業、地域密着型介護予防サービス事業、居宅介護支援事業、介護予防支援事業、介護老人保健施設を経営する事業、地域支援事業を市町村から受託して実施する事業、老人保健法に規定する指定老人訪問看護を行う事業

※居宅介護支援事業等を、特別養護老人ホーム等の社会福祉事業の施設の経営に付随して行う場合や、小規模で社会福祉事業と一体的に行われる事業または社会福祉事業の施設の機能を活用して行う事業の場合には、定款上、公益事業として記載しなくとも差し支えありません。

⑬有料老人ホームを経営する事業

⑭社会福祉協議会等において、社会福祉協議会活動等に参加する者の福利厚生を図ることを目的として、宿泊所、保養所、食堂等を経営する事業

⑮公益的事業を行う団体に、事務所・集会所等として、無償または実費に近い対価で使用させるために、会館等を経営する事業

※営利を行う者に対して、無償または実費に近い対価で使用させるような計画は適当ではないとされます。また、このような者に対して収益を得る目的で貸与する場合は、収益事業となります。

地域公益事業について

社会福祉法人は、社会福祉事業や公益事業において、日常生活・社会生活上の支援を必要とする者に対して、無料または低額な料金で、福祉サービスを積極的に提供するよう努めなければならないものとされています。

社会福祉法
(経営の原則等)
第二十四条(略)
2 社会福祉法人は、社会福祉事業及び第二十六条第一項に規定する公益事業を行うに当たつては、日常生活又は社会生活上の支援を必要とする者に対して、無料又は低額な料金で、福祉サービスを積極的に提供するよう努めなければならない。

この福祉サービスを「地域における公益的な取組」といいます。

地域における公益的な取組のうち、公益事業によるものを「地域公益事業」といいます。

地域公益事業について、厚生労働省は、次のとおり例示しています。
・ 様々なニーズに対応した分野横断的かつ包括的なワンストップ相談支援拠点の設置
・ 現時点では自立している単身高齢者に対する見守り等その孤立死防止のための事業
・ 公的サービスの利用ができない者に対するゴミ出しや買い物等の軽度日常生活支援
・ 高齢者や障害者、子ども、地域住民等の共生の場づくり
・ 緊急一時的に支援が必要な者に対する宿所や食料の提供、資金の貸付け
・ 貧困家庭の子どもに対する奨学金の貸与と、自立に向けた継続的な相談支援
・ 仕事と介護や子育ての両立に向けた支援
・ 地域課題を踏まえた障害者等の職場づくり
・ 中山間地域等における移動困難者に対する移送支援
・ 高齢者や障害者等に対する権利擁護支援
・ 災害時要援護者に対する支援体制の構築

なお、社会福祉充実残額を保有する社会福祉法人は、社会福祉充実計画を策定し、社会福祉事業または地域公益事業等の実施に再投資することが求められています。

「社会福祉充実残額」とは、社会福祉法人が保有する財産のうち、毎会計年度において、事業継続に必要な財産を控除したあとの再投下可能な財産をいいます。別名、社会福祉充実財産ともいいます。

また、地域公益事業を行う計画の策定にあたっては、事業の実施を予定する地域に設置された地域協議会において「地域公益事業の内容及び事業区域における需要」について「住民その他の関係者」の意見を聴かなければならないこととされています。

「地域協議会」とは、社会福祉法人に対して、円滑かつ公正中立な意見聴取が行えるようにするとともに、地域における関係者のネットワークを強化し、関係者間での地域課題の共有、各種事業の役割分担の整理など、地域福祉の推進体制の強化を図るために設置される協議会とされています。

地域協議会は、効率的に開催する観点から、可能な限り既存の会議体を活用するものとされており、具体的には、社会福祉協議会における地域福祉活動支援計画策定委員会や、地域ケア会議、自立支援協議会などが想定されています。
また、所轄庁による地域協議会を開催も想定されています。

まとめ

この記事のまとめ

社会福祉法人は、社会福祉事業に支障がない限り、「公益事業」を行うことができます。

社会福祉法人の公益事業とは、次の条件に該当する事業をいいます。
①公益を目的とする事業で、社会福祉事業以外のもの
②社会福祉事業の円滑な遂行を妨げるおそれがない
③社会福祉事業に対し、従たる地位にある
④社会福祉と関係がある
⑤公益事業に生じた剰余金は、その法人が行う社会福祉事業や公益事業に充てる

公益事業に該当する事業には、介護保険法上の各種サービスや、有料老人ホームの経営など、様々なものが含まれます。
第1種社会福祉事業や、第2種社会福祉事業のうちの一部のものに該当するものの、いわゆる「事業規模要件」を満たさないために、社会福祉事業に含まれない事業も含まれます。

社会福祉法人が、公益事業によって、日常生活・社会生活上の支援を必要とする者に対して、無料または低額な料金で福祉サービスを提供する場合、これを「地域公益事業」といいます。

この記事を書いた人
行政書士上田

法務省、内閣官房、復興庁での勤務を経て、行政書士・社会福祉士として開業。 14年間、公務員として福祉分野などに関わってきた経験を生かして、許認可申請と生活相談を専門とした行政書士・社会福祉士として、お客様の事業や生活を支援しています。

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