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社会福祉法人の定期の事務処理について

社会福祉事業

社会福祉法人の運営にあたっては、社会福祉法や社会福祉法人標準定款例に定められた定期的な事務処理があります。

定期的な事務処理は、法人の事業計画・予算・決算に関する手続きが中心といえます。

この記事では、それらの事務処理について説明します。

事業計画、収支予算の策定・作成

事業計画、収支予算の策定・作成は、おおむね1月から3月にかけて行われます。

事業計画や収支予算等の作成手続きについて、社会福祉法には定めがありません。

具体的な作成手続きは、法人の内部管理のための手続きとして、法人自治の範囲内とされています。よって、法人が定款で定めることになります。

そこで、社会福祉法人標準定款例においては、事業契約や収支予算の作成が定められています。

社会福祉法人標準定款例

(事業計画及び収支予算)
第三一条 この法人の事業計画書及び収支予算書については、毎会計年度開始の日の前日までに、理事長が作成し、<例1:理事会の承認、例2:理事会の決議を経て、評議員会の承認>を受けなければならない。これを変更する場合も、同様とする。
(以下略)

毎会計年度開始の日の前日までに、理事長において作成し、理事会等での同意を得ます。

事業計画及び収支予算について、評議員会での承認を要することを定款に定めている場合、同意を得た事業計画(収支予算を含む)については、評議員会において承認を受けなければなりません。

租税特別措置法第40条(財産の寄附に関する譲渡所得等の非課税措置)の適用を受ける法人においては、定款に手続きを定めた上で、毎会計年度開始の日の前日までに、理事長が事業計画・収支予算を作成し、理事会における理事総数(現在数)の3分の2以上の同意、および評議員会の承認を受ける必要があります。

事業報告等及び計算関係書類の作成

事業報告等及び計算関係書類の作成は、おおむね4月から6月にかけて行われます。

社会福祉法

(計算書類等の作成及び保存)
第四十五条の二十七 (略)
2 社会福祉法人は、毎会計年度終了後三月以内に、厚生労働省令で定めるところにより、各会計年度に係る計算書類(貸借対照表及び収支計算書をいう。以下この款において同じ。)及び事業報告並びにこれらの附属明細書を作成しなければならない。
(以下略)
 
(計算書類等の監査等)
第四十五条の二十八 前条第二項の計算書類及び事業報告並びにこれらの附属明細書は、厚生労働省令で定めるところにより、監事の監査を受けなければならない。
2 前項の規定にかかわらず、会計監査人設置社会福祉法人においては、次の各号に掲げるものは、厚生労働省令で定めるところにより、当該各号に定める者の監査を受けなければならない。
一 前条第二項の計算書類及びその附属明細書 監事及び会計監査人
二 前条第二項の事業報告及びその附属明細書 監事
3 第一項又は前項の監査を受けた計算書類及び事業報告並びにこれらの附属明細書は、理事会の承認を受けなければならない。
 
社会福祉法人標準定款例
(事業報告及び決算)
第三二条 この法人の事業報告及び決算については、毎会計年度終了後、理事長が次の書類を作成し、監事の監査を受けた上で、理事会の承認を受けなければならない。
(1) 事業報告
(2) 事業報告の附属明細書
(3) 貸借対照表
(4) 収支計算書(資金収支計算書及び事業活動計算書)
(5) 貸借対照表及び収支計算書(資金収支計算書及び事業活動計算書)の附属明細書
(6) 財産目録
2 前項の承認を受けた書類のうち、第1号、第3号、第4号及び第6号の書類については、定時評議員会に提出し、第1号の書類についてはその内容を報告し、その他の書類については、承認を受けなければならない。
(以下略)

法人の会計責任者は、毎会計年度決算期(3月31日)において、総勘定元帳・各種補助簿を締め切り、決算整理を行います。

理事長は、次の書類を作成して、各監事に提出し、監事監査を受けた上で、決算理事会の承認を受けます。

(事業報告等)
・ 事業報告
・ 事業報告の附属明細書
(計算関係書類等)
・ 貸借対照表
・ 収支計算書(資金収支計算書及び事業活動計算書)
・ 貸借対照表及び収支計算書の附属明細書
・ 財産目録

事業報告等の作成については、社会福祉法施行規則にも細かな定めがあります。

さらに、決算理事会の承認を受けた後に、評議員会の承認等を受けます。

所轄庁への提出期限は6月30日になります。
逆算すると、5月中旬までには作成し、各監事に提出する必要があります。

監事監査の実施

監事監査の実施・決算理事会の開催は、おおむね5月下旬から6月上旬頃にかけて行われます。

なお、監事監査の内容については、社会福祉法施行規則に細かな定めがあります。

監事監査の手順

① 理事長は、各監事に対し、事業報告等(事業報告及びその附属明細書)、計算関係書類(計算書類及びその附属明細書)及び財産目録を提出します。

② 監事は、次の手順で監事監査を実施します。
・ 監事で監事監査の実施方法(日程・職務分担など)について協議
・ 業務監査及び会計監査の実施
・ 監事報告の作成

③ 監事は、①の事業報告等、計算関係書類及び財産目録の理事長からの提出を受けてから4週間経過日までに、監事報告を理事長に提出します。
(例)
5月10日 理事長から監事へ事業報告等、計算関係書類等及び財産目録提出
5月29日 監事から理事長へ監事報告の提出(※ 法定期限は、6月8日)

決算理事会の開催

① 理事長は、理事会開催日の1週間前までに、役員(理事及び監事)に対し、理事会の招集通知を発出します。
※ 所定の手続きにより、招集手続の省略も可。

② 決算理事会を開催し、次の事項を審議します。
・ 事業報告等、計算関係書類及び財産目録の承認
・ 定時評議員会の日時・場所、議題等(決算・新役員・役員報酬基準等)の決定

③関係書類の備え置き
決算理事会終了後、事業報告等、計算関係書類等及び監査報告を事務所に備え置きます。(定時評議員会開催日の2週間前の日から)

定時評議員会の開催

定時評議員会は、おおむね6月下旬に開催されます。

定時評議員会では、前会計年度の計算書類等の決議(決算審査)を行います。

このため、計算書類等を所轄庁に届け出る毎年6月末日までに開催しなければなりません。

また、役員(理事及び監事)及び会計監査人の任期の満了日が、任期期間経過後の「定時評議員会の終結の時まで」であることから、任期満了に伴う役員改選時期にあたる年においては、役員及び会計監査人の選任を行う必要があります。

定時評議員会の開催手順

① 評議員会は、理事会の決議により評議員会の日時及び場所等を定め、理事が招集します。

② 理事長は、定時評議員会開催日の1週間前までに、評議員に対し、定時評議員会の招集通知を発出します。(例外として「招集手続の省略」の方法があります)

※ 招集通知の記載事項(理事会の決議事項)
・ 評議員会の日時及び場所
・ 評議員会の目的である事項がある場合は当該事項
・ 評議員会の目的である事項に係る議案の概要

③ 定時評議員会では、次の事項の報告を受け、決議を行います。
(毎年度必ず行うもの)
・ 事業報告等、計算書類及び財産目録の報告
(改選・改正時等に行うもの)
・ 役員改選期における新役員の選任、改正時における報酬基準の承認等
・ 社会福祉充実残額がある場合、社会福祉充実計画原案の承認

④ 定時評議員会での承認を経て、理事長は6月30日までに、次の事務を行います。
・ 定時評議員会議事録案の作成、議事録署名人による確認
・ 資産総額の変更登記
・ 現況報告書、計算書類等の所轄庁への届出・公表

資産総額変更登記

決算において、資産総額に変更が生じた場合、資産総額変更登記は、おおむね6月末までに行います。

組合等登記令第2条第6項別表の定めにより、社会福祉法人の資産の総額は、登記事項に該当します。

同令第3条の定めにより、資産の総額に変更があった場合は、変更の登記をします。

組合等登記令
(設立の登記)
第二条 組合等の設立の登記は、その主たる事務所の所在地において、設立の認可、出資の払込みその他設立に必要な手続が終了した日から二週間以内にしなければならない。
2 前項の登記においては、次に掲げる事項を登記しなければならない。
一 目的及び業務
二 名称
三 事務所の所在場所
四 代表権を有する者の氏名、住所及び資格
五 存続期間又は解散の事由を定めたときは、その期間又は事由
六 別表の登記事項の欄に掲げる事項
(変更の登記)
第三条 組合等において前条第二項各号に掲げる事項に変更が生じたときは、二週間以内に、その主たる事務所の所在地において、変更の登記をしなければならない。
2 前項の規定にかかわらず、出資若しくは払い込んだ出資の総額又は出資の総口数の変更の登記は、毎事業年度末日現在により、当該末日から四週間以内にすれば足りる。
3 第一項の規定にかかわらず、資産の総額の変更の登記は、毎事業年度末日現在により、当該末日から三月以内にすれば足りる。

資産総額変更登記の手続き

① 主たる事務所の所在地を管轄する法務局に必要な書類を提出します。

必要書類 … 監事監査報告書、決算理事会議事録、決算財務諸表等

なお、計算書類(決算財務諸表等)の承認は、定時評議員会の決議事項です。

定時評議会の開催スケジュールを踏まえて逆算すると、前会計年度決算に基づく資産総額の変更登記は、定時評議員会での承認を経た上で、6月末までに行うことになります。

社会福祉法人現況報告書等の所轄庁への届出

社会福祉法人現況報告書等の届出は、6月末までに行うことが法に定められています。

(所轄庁への届出)
第五十九条 社会福祉法人は、毎会計年度終了後三月以内に、厚生労働省令で定めるところにより、次に掲げる書類を所轄庁に届け出なければならない。
一 第四十五条の三十二第一項に規定する計算書類等
二 第四十五条の三十四第二項に規定する財産目録等

社会福祉法人現況報告書等の届出手順

財務諸表等電子開示システムと電子メールによる届出があります。

財務諸表等電子開示システムによる届出

「財務諸表等電子開示システム」により届け出る書類は次のとおりです。

・ 現況報告書
・ 計算書類等(貸借対照表・事業活動計算書・資金収支計算書・拠点区分事業活動明細書、拠点区分資金収支明細書)
・ 財産目録
・ 社会福祉充実残額算定シート
・ 社会福祉充実計画(社会福祉充実残額が生じた場合)

これらの書類は「財務諸表等電子開示システム」からダウンロードした財務諸表等入力シートに、財務諸表等の内容を入力して作成します。

所轄庁への届出は、入力済みの財務諸表等入力シートを「財務諸表等電子開示システム」にアップロードし、インターネットを経由して行います。

※ 財務諸表等電子開示システムを利用するための法人IDは、同システムを管理する「独立行政法人福祉医療機構」から付与されます。

電子メールによる届出

電子メールにより届け出る書類は次のとおりです。

・ 計算書類の附属明細書
・ 事業報告(及び附属明細書)
・ 監査報告
・ 会計監査報告(※ 会計監査人を設置している場合)
・ 役員等名簿(役員等の氏名及び住所を記載した名簿)
・ 報酬等の支給の基準を記載した書類(役員等報酬等支給基準)
・ 事業計画書(定款で作成することになっている場合)

PDFファイルなど電子ファイル化したものを、電子メールに添付して所轄庁へ届け出ます。

理事会・評議員会の開催

法令や定款の定めにより、理事会や評議員会での決議を要する事項が生じた場合は、そのつど理事会や評議員会を開催し、審議する必要があります。

特に、評議員会を開催するためには、理事会において評議員会の招集に係る事項を決議しなければならないため、必ず理事会を開催することになります。

理事会・評議員会の開催時期

理事会・評議員会ともに、必要に応じて開催することになります。

この点、理事会については、社会福祉法の定めにより、理事長・業務執行理事の理事会への業務執行報告回数が、3か月に1回以上とされていることから、それに応じた開催が必要になります。 (定款で毎会計年度に4か月を超える間隔で2回以上と規定することも可能)

社会福祉法

(理事の職務及び権限等)
第四十五条の十六 (略)
2 次に掲げる理事は、社会福祉法人の業務を執行する。
一 理事長
二 理事長以外の理事であつて、理事会の決議によつて社会福祉法人の業務を執行する理事として選定されたもの
3 前項各号に掲げる理事は、三月に一回以上、自己の職務の執行の状況を理事会に報告しなければならない。ただし、定款で毎会計年度に四月を超える間隔で二回以上その報告をしなければならない旨を定めた場合は、この限りでない。

法律上、毎年度定例的に開催する必要があるものは次のとおりです。

〇理事会
予算理事会(2~3月)
決算理事会(5~6月)
理事長・業務執行理事の業務執行報告を行う理事会

〇評議員会
定時評議員会(6月)

まとめ

この記事のまとめ

社会福祉法人の運営にあたっては、社会福祉法や社会福祉法人標準定款例に定められた定期的な事務処理があります。

1.事業計画・予算・決算に関する事務処理
①事業計画、収支予算の策定・作成(1月~3月)
②事業報告等及び計算関係書類の作成(4月~6月)
③監事監査の実施・決算理事会(5月下旬~6月上旬)
④定時評議員会(6月下旬)
⑤資産総額変更登記(変更がある場合。6月末)
⑥社会福祉法人現況報告書等の届出(6月末)

2.理事会・評議員会に関する事務処理
・決議事項が生じるつど開催
・理事長や業務執行理事の業務執行報告のための理事会は、原則3か月に1回以上開催

この記事を書いた人
行政書士上田

法務省、内閣官房、復興庁での勤務を経て、行政書士・社会福祉士として開業。 14年間、公務員として福祉分野などに関わってきた経験を生かして、許認可申請と生活相談を専門とした行政書士・社会福祉士として、お客様の事業や生活を支援しています。

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