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遺言でできること 相続財産の処分について

遺言は誰でもできる? 遺言

遺言は、遺言書に書かれる内容によっては、相続人や相続財産に、大きな影響を与えることがあります。

遺言者は、遺言書に何を書けるのか、書くとどうなるのか、把握した上で書くことが責任といえます。

この記事では、相続財産の処分に影響を与える事項について説明します。

遺言で相続財産の処分に影響を与える事項について

遺言者が、遺言によって、相続財産の処分に影響を与える事項は、次のとおりです。
①遺贈
②一般財団法人の設立
③信託の設定

遺贈

遺言者は、遺言で、指定した人に、相続財産を与えることができます。これを遺贈といいます。

民法

(包括遺贈及び特定遺贈)
第九百六十四条 遺言者は、包括又は特定の名義で、その財産の全部又は一部を処分することができる。ただし、遺留分に関する規定に違反することができない。

遺贈は、相続に優先します。
ただし、相続人の遺留分(法律で定められた最低限の相続分)を侵害できません。

遺贈については、こちらの記事で具体的に説明しています。

一般財団法人の設立

遺言者は、遺言で、一般財団法人を設立することができます。

一般社団法人及び一般財団法人に関する法律

(定款の作成)
第百五十二条 一般財団法人を設立するには、設立者(設立者が二人以上あるときは、その全員)が定款を作成し、これに署名し、又は記名押印しなければならない。
2 設立者は、遺言で、次条第一項各号に掲げる事項及び第百五十四条に規定する事項を定めて一般財団法人を設立する意思を表示することができる。この場合においては、遺言執行者は、当該遺言の効力が生じた後、遅滞なく、当該遺言で定めた事項を記載した定款を作成し、これに署名し、又は記名押印しなければならない。
3 第十条第二項の規定は、前二項の定款について準用する。

一般財団法人とは

一般財団法人とは「財産」に法人格を与え、組織化したものです。
一般財団法人は、理事や監事、評議員などによって構成されます。
設立時に寄付された財産(遺言による設立の場合は遺産)によって、定款で定めた目的(活動目的は公益目的に限りません)のために活動します。
設立に際して、官公庁の許可が必要なく、一定の手続きと登記だけで設立できます。

遺言者の死後、財団設立までの流れは、次のとおりです。

①遺言者が遺言で一般財団法人を設立する意思を表示し、定款に記載すべき内容を遺言で定める。
②遺言執行者が、遺言に基づいて、遅滞なく定款を作成して、公証人の認証を受ける。
③遺言執行者が財産(価額300万円以上)の拠出を行う。
④定款で設立時評議員、設立時理事、設立時監事(設立時会計監査人を置く場合は、これを含む)を定めなかったときは、定款の定めに従い、これらの者の選任を行う。
⑤設立時理事及び設立時監事が設立手続の調査を行う。
⑥設立時理事が法人を代表すべき者(設立時代表理事)を選定し、設立時代表理事が法定の期限内に主たる事務所の所在地を管轄する法務局に設立の登記の申請を行う。

以上のとおり、財団設立の手続きは、遺言執行者が行います。
遺言者は、遺言で、遺言執行者を指定できます。

遺言者が遺言執行者を指定しない場合は、相続人の申し立てにより、家庭裁判所が遺言執行者を選任します。

信託の設定

遺言者は、遺言で、一般財団法人を設立することができます。

信託法

(信託の方法)
第三条 信託は、次に掲げる方法のいずれかによってする。
一 特定の者との間で、当該特定の者に対し財産の譲渡、担保権の設定その他の財産の処分をする旨並びに当該特定の者が一定の目的に従い財産の管理又は処分及びその他の当該目的の達成のために必要な行為をすべき旨の契約(以下「信託契約」という。)を締結する方法
二 特定の者に対し財産の譲渡、担保権の設定その他の財産の処分をする旨並びに当該特定の者が一定の目的に従い財産の管理又は処分及びその他の当該目的の達成のために必要な行為をすべき旨の遺言をする方法
三 特定の者が一定の目的に従い自己の有する一定の財産の管理又は処分及びその他の当該目的の達成のために必要な行為を自らすべき旨の意思表示を公正証書その他の書面又は電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものとして法務省令で定めるものをいう。以下同じ。)で当該目的、当該財産の特定に必要な事項その他の法務省令で定める事項を記載し又は記録したものによってする方法

信託とは

信託とは、自分の財産を、信頼できる人や組織に託し、自分が決めた目的に沿って、運用・管理してもらう制度です。
遺言において、遺族の生計のためや、公益目的などのために、信託を利用することがあります。
なお、信託銀行による遺言執行のサービスで”遺言信託”などと呼ばれているものがありますが、この記事で説明している遺言による信託とは異なるものです。

遺言による信託は、信託する人(遺言者・委託者)が、信託する財産を、誰のために、どのような目的で、どのように管理・運用するのかということを、遺言で決めます。

信託の目的は、違法・脱法的なものではない限り、委託者が自由に決めることができます。

また、委託者は、財産を信託される人(受託者)や、信託財産の運用益を受け取る人(受益者)を決めます。
なお、受託者が受益者を兼ねることもできます。
また、受託者も受益者も、法人でも構いません。

信託をすると、委託者の財産の所有権は、受託者に移転します。
信託された財産は、受託者のもとで、受益者のための財産として管理・運用されます。

遺言による信託が利用されるケースとして、次のようなものがあります。

親が亡くなった後、子の福祉について配慮が必要な場合

残された子が未成年者であったり、知的(または精神)障害者であったりで、財産の管理能力が無い場合に、後見人を受託者、子を受益者として、遺言による信託をします。
相続人が認知症の場合なども同様です。

財産の浪費を予防したい場合

遺族に浪費癖が強く、相続財産を浪費してしまうおそれがある場合、信託銀行などの財産管理を行う者を受託者、遺族を受益者とします。

遺言に記載する際の留意事項

以上のとおり、遺言者は、遺言によって、相続財産の処分に影響を与えることができます。

影響の大きさを踏まえると、これらの事項を記載する遺言は、事前に、専門家の精査を経ておくことが望ましいといえます。

この点、自筆証書遺言や秘密証書遺言で相続財産の処分を定めた場合、家庭裁判所での検認手続きで、遺言書の方式不備が指摘され、遺言書が無効になるおそれがあります。

以上を踏まえると、相続財産の処分について定める遺言は、公正証書遺言によることが望ましいといえます。
公正証書遺言は、公証人による遺言の事前チェックがあるので、方式面や内容面の不備を心配することはありません。

まとめ

この記事のまとめ

遺言者は、遺言で、相続財産の処分に影響を与えることを決められます。

遺贈や、一般財団法人の設立、信託ができます。

これらの事項は、相続財産に与える影響が大きいことに留意し、遺言が無効にならないように慎重に作成する必要があります。

公正証書遺言は、公証人による事前チェックがあり、遺言の内容を精査できます。

この記事を書いた人
行政書士上田

法務省、内閣官房、復興庁での勤務を経て、行政書士・社会福祉士として開業。 14年間、公務員として福祉分野などに関わってきた経験を生かして、許認可申請と生活相談を専門とした行政書士・社会福祉士として、お客様の事業や生活を支援しています。

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