遺言をどうやって書いたらいいのか、お悩みの方もおられると思います。
遺言の書き方には、おもに3つの方式があります。
この記事では、その3つの方式について紹介します。
遺言の書き方にはルールがある?
遺言は、どんな書き方でもいいのでしょうか?
遺言については、「民法」という法律で、次のようにルールが定められています。
遺言は、この法律に定める方式に従わなければ、することができない。
出典:民法 第960条
遺言は、遺言者(遺言をする人)の最後のメッセージです。
そのため、遺言者の真意を確実に実現させるよう、厳格な方式が定められています。
民法が定める遺言の方式に従わない遺言は、裁判で無効になってしまうことがあります。
民法が定める遺言の方式は、何種類もあります。
すべての方式について、以下でみていきますが、すべての方式に共通していることとして、遺言は書面でなされる必要があるということです。
したがって、録音や動画なとで遺言を残しても、法律上の遺言としては無効とされてしまいます。
残念ながら、こうした録音や動画をもとに、遺族が「遺言者は、生前こう言っていた」と言ってみても、遺産相続の場面などで、遺言としては認められません。
遺言の方式とは
以上のとおり、民法に定める「遺言の方式」を用いない遺言は、無効とされてしまいます。
民法では、遺言の方式について、「普通の方式」と「特別の方式」を定めています。
「普通の方式」による遺言は3種類あり、これが一般的に遺言書と言われているものです。
「特別の方式」は、まさに死が迫っているという、危急時の遺言で用いられる方式です。
それ以外の状況(平常時)では「普通の方式」が用いられます。
普通の方式の遺言
普通の方式の遺言は、平常時の生活において書かれる遺言です。
一般的に、日常生活において遺言を書く場合は、この普通の方式の遺言になります
普通の方式の遺言について、民法では、3つの方式を定めています。
遺言は、自筆証書、公正証書又は秘密証書によってしなければならない。ただし、特別の方式によることを許す場合は、この限りでない。
出典:民法 第967条
普通の方式の遺言には、①自筆証書、②公正証書、③秘密証書の3種類があり、それぞれ特徴があります。 これらは、遺言者が自由に選択することができます。
それぞれの特徴を知り、自らが残したい遺言の特徴に合わせて、選択するとよいでしょう。
それぞれの方式については、以下の記事に詳しく書いていますので参考にしてください。
自筆証書遺言
自分で書く遺言です。手軽ですが、内容や形式の正しさは自己責任での対応となります。内容や形式に不備があると、遺言が無効となったり、遺族間の紛争のもとになるおそれがあります。
公正証書遺言
法律の専門家である公証人に書いてもらう遺言です。内容や形式の正しさに信用があり、高い証拠能力を備えています。遺言の内容をめぐる後日の紛争を予防できます。
秘密証書遺言
自分で書く遺言です。書いた内容を秘密にしながら、遺言の存在だけを公証人に証明してもらうものです。これといった用途が無く、あまり用いられていません。
特別の方式の遺言
以下、日常生活で作成する機会は少ないですが、特別の方式の遺言にも触れておきます。
特別の方式の遺言について、民法では次のとおり定めています。
以下を簡略すると、①疾病などで死亡の危急にある者、②伝染病のため隔離されている者、③在船者、④船舶遭難者については、それぞれ所定の数の証人を立ち会わせるなどした上で、遺言を残すことができるとされています。
疾病などで死亡の危急にある人の遺言の方式
疾病などで死亡の危急にある人の場合、3人以上の証人を立ち会わせて、その証人のうちの1人に、口頭で遺言を伝え、筆記させることで遺言にすることができます。
以下、細かいルールについては、民法第967条に定めがあります。
疾病その他の事由によって死亡の危急に迫った者が遺言をしようとするときは、証人三人以上の立会いをもって、その一人に遺言の趣旨を口授して、これをすることができる。この場合においては、その口授を受けた者が、これを筆記して、遺言者及び他の証人に読み聞かせ、又は閲覧させ、各証人がその筆記の正確なことを承認した後、これに署名し、印を押さなければならない。
2 口がきけない者が前項の規定により遺言をする場合には、遺言者は、証人の前で、遺言の趣旨を通訳人の通訳により申述して、同項の口授に代えなければならない。
3 第一項後段の遺言者又は他の証人が耳が聞こえない者である場合には、遺言の趣旨の口授又は申述を受けた者は、同項後段に規定する筆記した内容を通訳人の通訳によりその遺言者又は他の証人に伝えて、同項後段の読み聞かせに代えることができる。
4 前三項の規定によりした遺言は、遺言の日から二十日以内に、証人の一人又は利害関係人から家庭裁判所に請求してその確認を得なければ、その効力を生じない。
5 家庭裁判所は、前項の遺言が遺言者の真意に出たものであるとの心証を得なければ、これを確認することができない。
出典:民法 第967条
伝染病で隔離されている人の遺言の方式
伝染病で隔離されている人の場合も、特別な方式による遺言の方式が定められています。
伝染病のため行政処分によって交通を断たれた場所に在る者は、警察官一人及び証人一人以上の立会いをもって遺言書を作ることができる。
出典:民法 第977条
在船者の遺言の方式
船に乗っている人の場合も、特別な方式による遺言の方式が定められています。
船舶中に在る者は、船長又は事務員一人及び証人二人以上の立会いをもって遺言書を作ることができる。
出典:民法 第978条
船舶遭難者の遺言の方式
船舶で航海中に遭難した場合も、特別な方式による遺言の方式が定められています。
船舶が遭難した場合において、当該船舶中に在って死亡の危急に迫った者は、証人二人以上の立会いをもって口頭で遺言をすることができる。
出典:民法 第979条
2 口がきけない者が前項の規定により遺言をする場合には、遺言者は、通訳人の通訳によりこれをしなければならない。
3 前二項の規定に従ってした遺言は、証人が、その趣旨を筆記して、これに署名し、印を押し、かつ、証人の一人又は利害関係人から遅滞なく家庭裁判所に請求してその確認を得なければ、その効力を生じない。
4 第九百七十六条第五項の規定は、前項の場合について準用する。