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建設業許可の「財産的基礎」とは?

建設業

建設業許可を取得するにあたっては、許可の申請をする建設業者に「財産的基礎」があることが求められます。

財産的基礎とは「建設業者が事業を継続するための財務力」のことです。

建設工事をするにあたっては、資材の購入や、労働者の確保、機械器具等の購入など、一定の準備資金が必要になります。また、営業活動を行うにも、資金が必要です。

このため、建設業の許可では、許可を申請する建設業者に、建設業許可が必要となる規模の工事を請け負うことができるだけの財産的基礎があることを、許可を与える基準のひとつとしています。

よって、建設業許可の申請にあたっては、建設業者は、事業者として、十分な事業資金があるのか、所定の方法で証明しなければいけません。

この記事では、建設業許可の取得に必要となる財産的基礎について説明します。

建設業者の財務面での安定性が問われている

財産的基礎とは「建設業者が事業を継続するための財務力」のことです。

建設業許可を受けた建設業者は、請負金額が多額となる工事を施工することになります。

契約締結後、準備資金が不足して着工できなかったり、工事期間中に資金繰りができなくなって倒産するようなことがあってはいけません。

建設業を取得する建設業者には、財務面での安定性が求められています。

よって、建設業法では、建設業の許可にあたり、建設業者に「財産的基礎」を求めています。

以下、建設業法から引用します。

(許可の基準)
第七条 国土交通大臣又は都道府県知事は、許可を受けようとする者が次に掲げる基準に適合していると認めるときでなければ、許可をしてはならない。
一~三 (略)
四 請負契約(第三条第一項ただし書の政令で定める軽微な建設工事に係るものを除く。)を履行するに足りる財産的基礎又は金銭的信用を有しないことが明らかな者でないこと。

(許可の基準)
第十五条 国土交通大臣又は都道府県知事は、特定建設業の許可を受けようとする者が次に掲げる基準に適合していると認めるときでなければ、許可をしてはならない。
一~二 (略) 
三 発注者との間の請負契約で、その請負代金の額が政令で定める金額以上であるものを履行するに足りる財産的基礎を有すること。

昭和二十四年法律第百号
建設業法

上記の引用のとおり、建設業法は、建設業許可を与える基準のひとつとして、建設業者に、財産的基礎(または金銭的信用)を求めています。

なお、上記の引用のうち、第7条は、一般建設業の許可を取得するときの基準です。
他方、第15条は、特定建設業許可を取得するときの基準です。
いずれの許可の場合も、建設業者に財産的基礎が求められています。

建設業の許可は「一般建設業」と「特定建設業」の2種類に区分されます。

①特定建設業…発注者から直接請け負った1件の工事代金について、4,500万円(建築工事業の場合は7,000万円)以上となる下請契約を締結する場合

②一般建設業…①以外の場合

①特定建設業は下請契約をする建設業者(元請業者)のための許可であり、②一般建設業は専門工事の建設業者(下請業者)のための許可であるといえます。
同一の工事業種について、①と②の両方の許可を取ることはできません。

以下、一般建設業と、特定建設業について、個別に、財産的基礎を説明します。

一般建設業の許可における財産的基礎

一般建設業の許可において、建設業者に財産的基礎があると認められるためには、次の3つのうち、どれかにあてはまる必要があります。

① 自己資本が500万円以上あること。
② 500万円以上の資金調達能力があること。
③ 直前5年間に建設業許可を受けて継続して営業した実績があること。

(2)次の①、②又は③に該当する者は、倒産することが明白である場合を除き本号の基準に適合するものとして取り扱う。
① 自己資本の額が500万円以上である者
② 500万円以上の資金を調達する能力を有すると認められる者
(略)
③ 許可申請直前の過去5年間許可を受けて継続して営業した実績を有する者

令和4年12月28日 国不建第463号 国土交通省 建設業許可事務ガイドラインについて

以下、①から③について、個別に説明します。

①自己資本が500万円以上あること

自己資本とは、建設業者が自力で集め、返済義務がないお金のことをいいます。
建設業者が、決算において、自己資本が500万円以上ある場合は、財産的基礎の基準を満たしています。
自己資本は、建設業者が、法人である場合と、個人である場合とで、計算方法が異なります。

〇建設業者が法人の場合
貸借対照表「純資産の部」の合計額
資本金や利益剰余金(税引後の利益)などが記載されている欄の合計額です。

〇建設業者が個人の場合
期首資本金、事業主借勘定、事業主利益の合計額から、事業主貸勘定の額を控除した額に、負債の部に計上されている利益留保性の引当金及び準備金の額を加えた額

※計算式
(期首資本金+事業主借勘定+事業主利益)― 事業主貸勘定 +(利益留保性の引当金+準備金)

(3)「自己資本」とは、法人にあっては貸借対照表における純資産合計の額を、個人にあっては期首資本金、事業主借勘定及び事業主利益の合計額から事業主貸勘定の額を控除した額に負債の部に計上されている利益留保性の引当金及び準備金の額を加えた額をいう。

令和4年12月28日 国不建第463号 国土交通省 建設業許可事務ガイドラインについて

自己資本が500万円以上あることの証明方法は、決算において作成した貸借対照表を許可申請時に提示する等の方法によって証明することになります。

会社を設立したばかりの場合は、決算を迎えていないので、設立時の貸借対照表により証明します。

(4)この基準を満たしているかどうかの判断は、原則として既存の企業にあっては申請時の直前の決算期における財務諸表により、新規設立の企業にあっては創業時における財務諸表により、それぞれ行う。

令和4年12月28日 国不建第463号 国土交通省 建設業許可事務ガイドラインについて

②500万円以上の資金調達能力があること

資金調達能力については、預金残高が基準になります。
建設業者の名義の銀行口座に、500万円以上の預金残高があることで、財産的基礎の基準を満たします。
建設業者が法人であるなら法人名義の口座に、個人事業主であるなら個人名義の口座に、500万円以上の残高が必要です。

資金調達能力の証明方法は、500万円以上の預金がある金融機関の預金残高証明書または融資証明書の原本を提出することによって証明します。

なお、証明書の証明日は、許可申請の受付日から1か月以内であることが必要です。
複数の金融機関に資金が分散しており、あわせて500万円とする場合は、証明日をそろえることが必要です。
証明書の証明日が重要です。証明書の発行日ではないので注意してください。

② 500万円以上の資金を調達する能力を有すると認められる者
(注)担保とすべき不動産等を有していること等により、金融機関等から500万円以上の資金について、融資を受けられる能力があると認められるか否かの判断は、具体的には、取引金融機関の融資証明書、預金残高証明書等により行う。

令和4年12月28日 国不建第463号 国土交通省 建設業許可事務ガイドラインについて

③直前5年間に建設業許可を受けて継続して営業した実績があること

建設業者が、すでに建設業許可を取得しており、かつ、現在も建設業許可業者として建設業を継続している場合、このルールに該当します。

建設業許可は5年ごとの更新制ですが、更新時も更新のための許可申請が必要です。
このとき、すでに建設業許可業者として5年間の事業実績があることをふまえて、財産的基礎の証明を省略することができるというルールになっています。

つまり、新規に許可を取得する場合には、関係がありません。

特定建設業の許可における財産的基礎

特定建設業の許可において、財産的基礎があると認められるための基準は、建設業者が、法人の場合と、個人の場合とで、次のとおり異なります。

法人の場合、申請時の直近の確定した貸借対照表(定時株主総会の承認を得たもの)において、下表の①から④までの全ての事項にあてはまることが必要です。

① 欠損比率 繰越利益剰余金の負の額 ―(資本剰余金+利益準備金+その他利益剰余金(繰越利益剰余金を除く))÷資本金×100≦20%
② 流動比率 流動資産合計 ÷ 流動負債合計×100≧75%
③ 資本金額 資本金≧2,000万円
④ 自己資本 純資産合計≧4,000万円

個人の場合は、申請時の直近の確定した貸借対照表において、下表の①から④までの全ての事項にあてはまることが必要です。

① 欠損比率 事業主損失 ―(事業主借勘定 ― 事業主貸勘定 + 利益留保性の引当金 + 準備金)÷ 期首資本金×100≦20%
② 流動比率流動資産合計÷流動負債合計×100≧75%
③ 資本金額期首資本金≧2,000万円
④ 自己資本(期首資本金 + 事業主借勘定 + 事業主利益)- 事業主貸勘定 + 利益留保性の引当金 + 準備金≧4,000万円

財産的基礎を証明するためには、財務諸表や預金残高証明書が必要になります。
財務諸表は、 決算時に作成したものをそのまま提出するのではなく、所定の計算方法によって再計算し、その計数を申請用の様式に転記する必要があります。

特定建設業者は、財産的基礎の要件が厳しくなっている

財産的基礎は、 一般建設業と特定建設業で基準が違います。

特定建設業の許可を受けようとする場合は、一般建設業の許可を受けようとする場合に比べて、財産的基礎の基準が厳しくなっています。

特定建設業者は、元請業者として、大規模な工事を請け負うことがあるため、財産的基礎の要件が厳しくなっています。

また、特定建設業者は、多くの下請業者に工事を請け負わせています。
下請業者を保護するためにも、財産的基礎の要件が厳しくなっています。

建設業法では、特定建設業者は、発注者から請負代金の支払いを受けていない場合であっても、下請負人から工事の目的物の引渡しの申し出がなされてから50日以内に、下請代金を支払う義務が課せられています。

(検査及び引渡し)
第二十四条の四 元請負人は、下請負人からその請け負つた建設工事が完成した旨の通知を受けたときは、当該通知を受けた日から二十日以内で、かつ、できる限り短い期間内に、その完成を確認するための検査を完了しなければならない。
2 元請負人は、前項の検査によつて建設工事の完成を確認した後、下請負人が申し出たときは、直ちに、当該建設工事の目的物の引渡しを受けなければならない。ただし、下請契約において定められた工事完成の時期から二十日を経過した日以前の一定の日に引渡しを受ける旨の特約がされている場合には、この限りでない。

(不利益取扱いの禁止)
第二十四条の五 元請負人は、当該元請負人について第十九条の三、第十九条の四、第二十四条の三第一項、前条又は次条第三項若しくは第四項の規定に違反する行為があるとして下請負人が国土交通大臣等(当該元請負人が許可を受けた国土交通大臣又は都道府県知事をいう。)、公正取引委員会又は中小企業庁長官にその事実を通報したことを理由として、当該下請負人に対して、取引の停止その他の不利益な取扱いをしてはならない。

(特定建設業者の下請代金の支払期日等)
第二十四条の六 特定建設業者が注文者となつた下請契約(下請契約における請負人が特定建設業者又は資本金額が政令で定める金額以上の法人であるものを除く。以下この条において同じ。)における下請代金の支払期日は、第二十四条の四第二項の申出の日(同項ただし書の場合にあつては、その一定の日。以下この条において同じ。)から起算して五十日を経過する日以前において、かつ、できる限り短い期間内において定められなければならない。
2 特定建設業者が注文者となつた下請契約において、下請代金の支払期日が定められなかつたときは第二十四条の四第二項の申出の日が、前項の規定に違反して下請代金の支払期日が定められたときは同条第二項の申出の日から起算して五十日を経過する日が下請代金の支払期日と定められたものとみなす。
(以下略)

昭和二十四年法律第百号
建設業法

以上のとおり、下請業者に対する支払期日等について定められているので、特定建設業者は、下請業者からの申出に備えて、下請代金の資金を確保しておく必要があります。

下請業者を保護するという意味でも、特定建設業者には、特に健全な財務力が求められています。

まとめ

この記事のまとめ

建設業の許可は、建設業者に「財産的基礎」がなければ、許可を受けられません。

財産的基礎とは「建設業者が事業を継続するための財務力」のことです。

一般建設業の許可では、次のどれかにあてはまれば、財産的基礎があると認められます。

①自己資本が500万円以上あること
②500万円以上の資金調達能力があること
③直前5年間に建設業許可を受けて継続して営業した実績があり、かつ、現在、建設業許可を有していること 

特定建設業の許可では、財産的基礎の要件が厳しくなっています。
特定建設業の許可では、次のどれかにあてはまれば、財産的基礎があると認められます。

〇特定建設業者が法人の場合

① 欠損比率 繰越利益剰余金の負の額 ―(資本剰余金+利益準備金+その他利益剰余金(繰越利益剰余金を除く))÷資本金×100≦20%
② 流動比率 流動資産合計 ÷ 流動負債合計×100≧75%
③ 資本金額 資本金≧2,000万円
④ 自己資本 純資産合計≧4,000万円

〇特定建設業者が個人の場合

① 欠損比率 事業主損失 ―(事業主借勘定 ― 事業主貸勘定 + 利益留保性の引当金 + 準備金)÷ 期首資本金×100≦20%
② 流動比率 流動資産合計÷流動負債合計×100≧75%
③ 資本金額 期首資本金≧2,000万円
④ 自己資本 (期首資本金 + 事業主借勘定 + 事業主利益)- 事業主貸勘定 + 利益留保性の引当金 + 準備金≧4,000万円

 

この記事を書いた人
行政書士上田

法務省、内閣官房、復興庁での勤務を経て、行政書士・社会福祉士として開業。 14年間、公務員として福祉分野などに関わってきた経験を生かして、許認可申請と生活相談を専門とした行政書士・社会福祉士として、お客様の事業や生活を支援しています。

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