建設業許可を受けるには、その建設業者の営業所ごとに「専任技術者」の配置が必要です。
専任技術者とは、おおまかにいえば「許可を取ろうとする工事業種の専任の技術者」のことです。
この記事では、専任技術者について、説明します。
技術力の確保が求められている
専任技術者とは、おおまかにいえば「許可を取ろうとする工事業種の専任の技術者」のことです。
建設業法では、建設業の許可にあたり、建設業者に、営業所ごとに「専任技術者」の配置を求めています。
建設業法
(許可の基準)
第七条 国土交通大臣又は都道府県知事は、許可を受けようとする者が次に掲げる基準に適合していると認めるときでなければ、許可をしてはならない。
一 (略)
二 その営業所ごとに、次のいずれかに該当する者で専任のものを置く者であること。
イ 許可を受けようとする建設業に係る建設工事に関し学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)による高等学校(旧中等学校令(昭和十八年勅令第三十六号)による実業学校を含む。以下同じ。)若しくは中等教育学校を卒業した後五年以上又は同法による大学(旧大学令(大正七年勅令第三百八十八号)による大学を含む。以下同じ。)若しくは高等専門学校(旧専門学校令(明治三十六年勅令第六十一号)による専門学校を含む。以下同じ。)を卒業した(同法による専門職大学の前期課程を修了した場合を含む。)後三年以上実務の経験を有する者で在学中に国土交通省令で定める学科を修めたもの
ロ 許可を受けようとする建設業に係る建設工事に関し十年以上実務の経験を有する者
ハ 国土交通大臣がイ又はロに掲げる者と同等以上の知識及び技術又は技能を有するものと認定した者
(以下略)
どうして専任技術者が必要なのでしょうか?
建設業許可を取得した建設業者は、規模の大きな工事や公共工事を請け負うことになります。
そうした工事を施工するためには、営業所ごとに、専門の技術者を、専任で配置することが必要になるものと考えられるからです。
建設業者に、技術力の確保が求められているといえます。
よって、許可申請にあたっては、営業所に専任技術者がいなければ、許可を受けられません。
専任技術者になるには
専任技術者とは、具体的にどのような人物がなれるのでしょうか?
おおまかには、①学歴+実務経験、②資格、③実務経験のいずれかを備えている人物ということになります。
どのような学歴や資格、実務経験があてはまるのかは、かなり細かいルールがあります。
ここでは、イメージをつかんでもらうために、代表的なものを抜粋します。
なお、ここでは、一般建設業許可の専任技術者について説明しています。
①専任技術者になれる学歴
学歴によって専任技術者になるには、学歴だけではなく、卒業後の実務経験も問われます。
例えば、高校の指定学科を卒業した場合、卒業後に、5年の実務経験が必要です。
また、大学の指定学科を卒業した場合、卒業後に、3年の実務経験が必要です。
ここでいう「実務経験」とは、許可を受けようとする工事業種の実務経験のことです。
また、「指定学科」とは、土木や建築、都市工学、機械工学など、許可を受けようとする種類の工事業種に関係のある学科のことです。
許可を受けようとする工事業種によって学科が異なります。
例えば、土木工事業や舗装工事業の許可を受けるのであれば、指定学科は、土木工学(農業土木、鉱山土木、森林土木、砂防、治山、緑地又は造園に関する学科を含む)、都市工学、衛生工学、交通工学に関する学科となります。
②専任技術者になれる資格
資格によって専任技術者になるには、建築士試験や技術士試験、技能検定、技術検定の合格者などがあてはまります。
合格しているだけでなく、合格後の実務経験が求められることもあります。
例えば、2級建築施工管理技士の種別のうち「躯体」の合格者であれば、大工工事業や、とび・土工工事業、タイル・れんが・ブロック工事業、鋼構造物工事業、鉄筋工事業の専任技術者になれます。
③専任技術者になれる実務経験
実務経験によって専任技術者になるには、原則として、許可を受けようとする種類の建設業について、10年の実務経験が必要になります。
言いかえると、10年の実務経験があれば、学歴・資格不問で、専任技術者になれます。
ここでいう実務経験とは、許可を受けようとする工事業種の実務経験のことです。
実務経験は、1業種について10年が必要です。
例えば、許可を受けようとする工事業種が2業種ある場合で、2業種の専任技術者を1人で兼ねる場合は、2業種×10年で、20年分の実務経験が必要となります。
ところで、許可申請にあたっては、10年分の実務経験を証明する必要があります。
学歴や資格であれば、卒業証明書や資格者証などで、学歴や資格があることを証明できますが、実務経験の場合は、そうした証明書がありません。
証明書の代わりに、実務をしてきたことの証拠として、10年分の実務に関する書類(工事契約書や請求書など)をそろえる必要があります。
資料収集が難しく、実務経験の証明が困難になることがあります。