株式会社を設立する際には、発起人(ほっきにん)と役員が必要です。
発起人とは、株式会社の設立のために、資金を出す人のことをいいます。
役員とは、取締役、代表取締役、監査役など、会社の経営を担当する人のことをいいます。
発起人
発起人は、株式会社の設立のために資金を出し、その代わりに、その資金に見合った株式を引き受けます。つまり、創業時の株主ということになります。
株式会社は、株主のものです。
発起人は、創業時の株主ですから、会社のオーナーということになります。
持ち株に応じて、株主総会で議決権を行使したり、配当を受け取ったりできます。
発起人になる資格
発起人になる資格に大きな制限はなく、基本的には、誰でも発起人になれると考えて差し支えありません。
法人、外国人、未成年者(ただし15歳以上から。法定代理人の同意が必要)、制限行為能力者(成年被後見人、被保佐人、被補助人。法定代理人の代理や同意が必要)も発起人になれます。
発起人が設立時にやること
発起人は、会社の設立者として、会社の基本的事項を定め、定款を作成し、資本金を出資します。
その他、設立に必要な行為(官公庁への各種届出や、営業に必要な契約など)をします。
発起設立と募集設立
株式会社は、発起人の出資によって設立します。
この点、株式会社の設立方法は、資金の集め方の違いで「発起設立」と「募集設立」があります。
この両者において、発起人がやることに違いがあります。
発起設立
発起設立は、発起人だけから、資金を集める方法です。
言いかえれば、資金を出した全員が、発起人となる設立方法です。
発起設立は、発起人さえ見つかれば、すぐに資金を集めることができます。
そのため、創業者本人や、その家族、友人など、身近な人が発起人となって、資金を出し合うことが一般的です。
発起人の数に制限はありません。創業者1人でも構いません。
この点、発起人は、会社の株主であり、オーナーであることを考えると、発起人を増やしすぎるのは、会社の意思決定に混乱や遅滞を生じかねず、避けたほうが無難であると思われます。
募集設立
募集設立は、発起人から資金を集めるだけでなく、募集によって資金を集める方法です。
募集に応じて資金を払い込んだ人は、その資金に見合った株式を引き受けます。
つまり、発起人のほかに、募集による株式引受人が、株主となり、オーナーとなります。
募集設立は、募集によって資金を集める方法なので、そもそも創業者に社会的信用がなければ、募集に誰も応じません。
よって、すでに事業を展開してる会社が、新たに子会社を設立する場合など、活用場面は限られています。
以下、募集設立のおおまかな手順です。
募集の方法に制限はなく、身内に対する私募でも、不特定多数に対する公募でも構いません。
募集にあたっての募集株式数や、払込金額、払込期日などは、発起人全員で決めます。
募集に対して、申し込みがあったら、発起人が、申込者に対して株式の割り当てを行います。
株式を割り当てられた申込者は、株式引受人として、割り当てられた株式に見合う資金を払い込みます。払い込まない場合、株主になる権利を失います。
払込後、発起人と株主引受人によって、創立総会が招集され、会社設立に関する重要事項を決議します。(この決議が設立登記の前提として必要になります)
役員
役員は、取締役、代表取締役、監査役など、会社の経営陣の総称です。
役員は、会社の設立前に決めておく必要があります。
会社の設立後は、役員が会社の経営を担っていくので、人選は重要です。
なお、発起人は、役員を兼ねることができます。
そこで、創業者が、発起人と役員(取締役)を兼ねていることが一般的です。
この点、会社の関係者について、役割と責任を明確化するために、会社の所有者と経営者を分離するのであれば、あえて発起人と役員を別人にすることもできます。
取締役
取締役は、会社の経営を担う役員であり、経営の責任者です。
取締役は、株式会社に、必ず置かなければいけません。
会社に取締役会を置く場合は、取締役は、3人以上が必要です。
会社設立時、取締役は、発起人によって選ばれます。
発起人が取締役になることも可能です。
取締役になる資格
次に該当する人は、取締役になる資格がありません。
① 法人
② 成年被後見人、被保佐人
③ 会社法、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律、金融商品取引法などの法律に違反して罪を犯し、その刑の執行を終えたか、刑の執行を受けることがなくなった日から、2年を経過していない人
④ ③以外の法律違反で、禁錮以上の刑に処せられて、その執行を終わるまで、またはその執行を受けることがなくなるまでの人(刑の執行猶予中の人を除く)
未成年者については、法定代理人の同意があれば、取締役になれます。
このほか、業種によっては、その業種に関する法律によって、役員の資格が定められている場合があるので注意が必要です。
取締役が設立時にやること
取締役が設立時にやることは、次のとおりです。
① 代表取締役の選任
② 設立時の手続きのチェック
取締役は、設立時の手続きが適正になされたか、調査します。
・定款どおりに出資がなされたか
・出資が完了したか
・現物出資の場合、税理士などによる現物出資財産の証明が適切か
・その他、法令や定款違反がないか
代表取締役
代表取締役は、会社の代表権を持った取締役です。
代表取締役は、会社に必ず置かなくてはいけません。
取締役が1人のみの会社であれば、その取締役が代表取締役になります。
取締役が複数いる場合で、取締役会を置く会社では、取締役会の決議で代表取締役を決めます。
他方、取締役が複数いる場合で、取締役を置かない会社では、すべての取締役に会社の代表権があります。
この場合、株主総会の決議や定款によって、代表取締役に選ぶことができます。
代表取締役は、複数人を置くこともできますが、会社の代表権を持つ役員が複数いることは、混乱の原因となるので、避けたほうが無難です。
ところで、一般に、代表取締役を、会長や社長と呼ぶことがありますが、会長や社長は、法律上の名称ではありません。その役割や権限は、会社によって様々です。
取締役会
取締役会は、会社の業務執行の決定機関で、取締役3人以上から構成されます。
基本的に、取締役会の取締役のうち、1人が代表取締役になります。
また、会社の業務執行を担当する業務執行取締役になることもあります。
取締役会を置く会社では、会社の業務に関することは、取締役会で決定し、代表取締役や業務執行取締役が、その決定事項を実行します。
会社法は、会社経営の効率化や、経営と所有の分離のために、取締役会に様々な権限を与えています(会社法第362条ほか)。よって、相対的に、会社経営に対する株主の影響力は低下します。
監査役
監査役は、取締役の業務を監督し、会計の監査をします。
監査役を置くかどうかは、自由です。
ただし、取締役会を置く場合は、原則、監査役も必ず置くことになります。
会計参与
会計参与は、役員の一種で、取締役等と共同して計算書類等を作成します。
会計参与を置くかどうかは、自由です。
ただし、取締役会を置く場合で、監査役を置かない場合は、必置となります。
なお、株式会社において、会計参与は、ほとんど置かれていないのが実情です。
役員の組み合わせ
役人の中には、必ず置かなければならないものと、そうでないものがあります。
必置のもの…取締役(最低1人)、代表取締役
そうでないもの…取締役(複数)、監査役、会計参与、取締役会
以上を踏まえると、例として、次のような役員の組み合わせが考えられます。
取締役1人のみ
取締役1名だけで、会社の業務を執行します。この取締役が、代表取締役にもなります。
最小規模の役員構成であり、フリーランスの個人事業主が法人成りした会社などが一例です。
取締役が複数で、取締役を置かない
複数の取締役を置くことで、会社の業務執行を分担できます。
複数の取締役のうち、1名が代表取締役になります。
また、取締役会を置かないことで、取締役会を維持するコストがかかりません。
小規模な会社に向いている構成で、家族経営の会社や、少数のビジネスパートナーで始めた新規事業の会社などが一例です。
取締役が複数で、取締役会と監査役を置く
複数の取締役によって取締役会が構成され、その決議に基づいて、代表取締役が業務を執行します。
取締役会を設置した会社では、取締役会が業務執行に大きな権限を持っているので、会社の経営陣による機動的な経営が可能となります。
また、取締役会を設置する会社は、監査役を必ず置かなければいけません。
監査役が取締役を監督し、会社の会計を監査することで、業務執行のチェック体制が強化されます。
この構成は、大企業にように、株主が多数が存在して、株主総会に任せては経営に関する意思決定が統一できにくく、かつまた、内部統制を徹底することで対外的な信用を得る必要が高い会社に向いています。