会社の名称は、会社法などの法律に従って決める必要があります。
会社法では、会社の名称のことを「商号」といいます。
この記事では、商号を決める際に気をつけるべきことを説明します。
商号のルール
商号を決めるにあたっては、次のようなルールがあります。
使用できる文字に制限がある
商号に使用できる文字は次のとおりです。
・漢字
・ひらがな
・カタカナ
・ローマ字(アルファベット)の大文字・小文字
・アラビア数字(算用数字)
・次の記号
「&」(アンパサンド)
「・」(中点、ナカテン)
「.」(ピリオド)
「-」(ハイフン)
「’ 」(アポストロフィー)
「,」コンマ
記号は、文字を区切る場合のみ使用できます。商号の先頭や末尾には使えません。
ただし、ピリオドは、ローマ字による略称を用いる場合のみ、末尾に使えます。
ローマ字を用いて、複数の単語をつらねる場合のみ、各単語の間に、スペース(余白)を使えます。
よく見かける記号である「!」「?」「@」などは使えません。
公序良俗に反する言葉は使用できない
商号は、犯罪や反社会的なことを意味する言葉を使用できません。
(例)窃盗、詐欺、売春、暴力団、テロリストなど
支店や部署など、会社の一部を商号にはできない
“株式会社〇〇東京支店”、”株式会社□□人事部”などの商号は認められません。
業種によっては使用しなければならない言葉がある
業種によっては、次のように、決められた言葉を商号に含める必要があります。
(例)銀行業 → 「銀行」、保険業 →「保険」
また、これらの業種ではない会社が、これらの言葉を商号に入れることはできません。
会社の種類や業種を示す言葉を使わなければならない
会社は、その会社の種類を示す言葉を、商号に使う必要があります。
例えば、株式会社は「株式会社」という言葉を商号に含める必要があります。
したがって、「株式会社〇〇」や「〇〇株式会社」というような商号になります。
また、他の種類を示す言葉を入れることはできません。
例えば、「株式会社」が「合同会社」を名乗ることはできません。
同じ住所でなければ、同じ商号を使用できる
会社法では、会社の住所が同じ住所でなければ、他社と同じ商号を使用できます。
つまり、ほとんど制限なく、他社と同じ商号を名乗ることができます。
しかし、このようなルールでは、既存の有名会社と同じ商号、または類似の商号を名乗って、自社のブランドイメージを高めようとする会社が出てくる可能性があります。
そこで、会社法では、不正の目的で、他の会社と誤認されるような、まぎらわしい商号を使用してはいけないことになっています。
また、まぎらわしい商号を使用されることで、自社の利益が侵害されうる会社は、まぎらわしい商号を使用している会社に対して、自社の利益を侵害しないように請求することができます。(会社法第8条)
よって、まぎらわしい商号を用いられた会社は、用いた会社に対して、商号の使用をやめるよう請求できます。ただし、こうした対応は、まぎらわしい商号を、不正の目的で、利用された場合に限られています。
他方、不正競争防止法では、他社の商号と同じ、または類似の商号を使用することを、不正の目的に限らず、禁止しています。
また、そうした商号を使用した者に対して、使用の差し止めや損害賠償を請求できます。
(不正競争防止法第3~5条)
また、商標法では、商号が商標登録されている場合、その商号と同じ、または類似の商号を使用することを、たとえ不正の目的がなくとも禁止しています。
また、まぎらわしい商号を使用する他社に対して、使用の差し止めや、損害賠償請求ができることがあります。
(商標法第36~38条)
他社と同じ・類似の商号を避けるための商号の調査について
商号は、会社法上は、同じ住所に、同じ商号がなければ、同じ商号を名乗ることができます。
そこで、まずは、同じ住所に、同じ商号があるのかを確認することになります。
次に、不正競争防止法や、商標法においては、同じ商号や、類似の商号の使用を禁止しているので、その点も調査する必要があります。
調査方法には、次のような方法があります。
①google や Yahoo! などで検索し、同名の会社がヒットするか確認します。
②電話帳で、近隣の事業者を調査する。
③法務局の窓口で「商号調査簿」を調査する。
④インターネットで、一般財団法人民事法務協会の「登記情報提供サービス」を使って商号を検索する。
⑤使いたい商号が商標登録されていないか、インターネットで、独立行政法人工業所有権情報・研修館(INPIT)の「特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)」を使って商号(商標)を検索する。