戸籍には、いろいろな種類があり、まぎらわしいものです。
本籍地の自治体で、戸籍を取ろうとして、申請用紙に何種類もの戸籍(のようなもの)が並んでいて、何を請求すればいいのか、迷ってしまう方もおられると思います。
ここでは、そうした戸籍の種類について整理しています。
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現在戸籍
一般的に、戸籍といえば、この「現在戸籍」のことをいいます。
戸籍を取る際の申請用紙に書かれている戸籍の種類のうち、”戸籍謄本”や”戸籍抄本”にある「戸籍」とは、この現在戸籍のことをいいます。
現在戸籍は、現在、その戸籍に在籍している人がいて、使用中の戸籍です。
戸籍簿として編製され、保管されています。
現在戸籍は、筆頭者と、その配偶者、未婚の子によって構成されるのが原則です。
現在戸籍の在籍者のうち、一定の条件に該当した人は、現在戸籍から除かれます。
例えば、妻(夫の戸籍に入籍していた場合。以下同じ)が離婚したり、子が婚姻したりすると、これまで在籍していた現在戸籍から除かれて、別の現在戸籍に在籍することになります。
離婚した妻は、実家の現在戸籍に戻ったり、自らを筆頭者として新しい現在戸籍を作ったりします。
婚姻した子は、その妻と、新たに夫婦の現在戸籍を作ります。
つまり、いったん現在戸籍の在籍者になった人は、その現在戸籍から除かれても、生存している限り、どこかの現在戸籍に記載されているといえます。
除籍
上記の現在戸籍に記載された人のうち、死亡した人や、離婚した妻、婚姻した子などは、その現在戸籍から除かれます。
このように、ある現在戸籍から人が除かれることを「除籍」といいます。
また、ある現在戸籍から、すべての人が除籍された場合、その誰もいなくなった戸籍は、現在戸籍ではなく「除籍」といいます。
このように、除籍という言葉には、2つの意味があり、後者のように、使用を終えた戸籍(かつての現在戸籍)を指すことがあります。
戸籍を取る際の申請用紙に書かれている戸籍の種類に、”除籍謄本”と”除籍抄本”がありますが、これらは、この除籍(かつての現在戸籍)のことをいいます。
除籍は、除籍された人について、除籍されるまでの事柄が記載されているので、その人の消息をたどる際に活用されることがあります。
例えば、家系を調査する場合、亡くなった御先祖様は、除籍に記載されていますので、除籍を過去へたどっていけば、何代も前の御先祖様の消息を知ることができます。
除籍の保管状況によりますが、筆者の場合、19世紀末の5代前まで遡れました。
除籍は、除籍簿として、作成年ごとに編製され、保管されています。
その保管期限は、かつては編製時から80年でしたが、現在は150年に改正されています。
改製原戸籍(原戸籍)
戸籍は、時代とともに、編製方法が変わってきました。
かつての編成方法で編製された戸籍が、新しい編製方法で作り変えられることを「改製」といいます。
戸籍の改製は、いわば、戸籍のバージョンアップみたいなものです。
この改製によって生じた、改製前の戸籍(かつての編製方法による戸籍)のことを、「改製原戸籍(または原戸籍)」といいます。
改製原戸籍の読み方は、かいせいはらこせき・かいせいげんこせき、どちらでも構いません。
いわば、改製原戸籍は、バージョンアップ前の、旧バージョンの戸籍ということです。
戸籍が改製された場合、その時点で戸籍に在籍している人の情報だけが、改製後の戸籍に引き継がれます。
改製前に除籍された人の情報などは、改製後の戸籍には記載されません。
戸籍は、バージョンアップ時に、すべてのデータが引き継がれるものではないということです。
よって、戸籍が改製されている場合、改製前に除籍された人の消息などは、改製原戸籍を取って確認することになります。
改製原戸籍は、改製年ごとに編成され、保管されています。
その保管期限は、かつては編成時から80年でしたが、現在は150年に改正されています。
謄本・抄本
「謄本」は、全体のコピーのことをいいます。
「抄本」は、部分のコピーのことをいいます。
戸籍謄本とは、戸籍(現在戸籍)の全部のコピーのことです。
その戸籍に記載されている全員の情報を確認できます。
戸籍抄本とは、戸籍(現在戸籍)の一部のコピーのことです。
その戸籍に記載されている人のうち、指定した個人の情報を確認できます。
除籍や改製原戸籍にも、謄本や抄本があり、同様の扱いとなります。
全部事項証明書・個人事項証明書
時代の流れで、戸籍も電子化が進んでいます。
現在、ほとんどの自治体で、紙に手書きする戸籍から、タイプライターによる作成へ、さらにはコンピュータの磁気ディスクに記録する戸籍へ移行しています。
戸籍を電子化している自治体では、謄本を「全部事項証明書」といい、抄本を「個人事項証明書」といいます。
よって、戸籍が電子化されている自治体では、次のように呼称が変わります。
戸籍謄本 → 戸籍の全部事項証明書
戸籍抄本 → 戸籍の個人事項証明書
除籍謄本 → 除籍の全部事項証明書
除籍抄本 → 除籍の個人事項証明書
なお、戸籍を電子化する際に、戸籍が改製されているので、電子化前の情報が一部引き継がれていないことがあります。引き継がれていない情報は、改製原戸籍で確認できます。(上記の改製原戸籍の項を参照)
記載事項証明書・一部事項証明書
自治体によっては、戸籍や除籍に記載された情報のうち、ごく一部だけ(例えば、出生情報のみ、婚姻情報のみ)を記載した「記載事項証明書」を交付していることがあります。
この記載事項証明書が電子化されたものを「一部事項証明書」といいます。
戸籍の附票
「戸籍の附票」は、その戸籍の在籍者の住民票上の住所の遍歴を記録したものです。
その戸籍の在籍者が、いつ、どこに、住民票を置いていたのかを、確認できます。
ただし、その戸籍に在籍した期間のみ記録されているので、離婚や転籍など、何らかの事情で、その戸籍から別の戸籍へ移ってしまった人については、以降の住所遍歴を確認できません。(別途、移った戸籍の附票を取ることで確認できます)
また、戸籍の附票には、「全員の写し」と、「一部の写し」があります。
全員の写し → 同じ戸籍に属する人全員の住所遍歴についての証明
一部の写し → 同じ戸籍に属する人のうち、一部の人の住所遍歴についての証明
なお、戸籍に附票があるように、除籍や改製原戸籍にも附票があります。
除籍や改製になるまでの住所の遍歴が確認できますが、保存期間が5年と短く、活用の機会は少ないものと思われます。
まとめ
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