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無料低額宿泊所の契約について

社会福祉事業

無料低額宿泊所は、宿泊所や生活サービスの利用について、利用者との契約が前提となります。

東京都内では、無料低額宿泊所の事業者は、利用者との契約において、東京都の「宿泊所設置運営指導指針」というガイドラインを遵守して、利用者の利益保護に努めなければいけません。

この記事では、この指針における契約に関する事項の概略を説明します。

無料低額宿泊所に関する契約形態の定義

指針では、無料低額宿泊所に関するサービスについて、2種類の契約形態を定めています。

無料低額宿泊所や、その宿泊所での各種サービスは、これらの契約を前提に実施することになります。

なお、利用者が宿泊所を利用する期間は、原則として1年以内とされています。

①宿泊所利用契約
宿泊所事業を営む者(以下「事業者」)が、宿泊所を利用する人(以下「利用者」)との契約によって、事業者が無料で、または利用者が対価を支払うことで、利用者に宿泊所を利用させ、また、基本サービスの提供を行うもの。

※基本サービスとは
宿泊所を利用する人(以下「利用者」)の安否確認、生活相談、緊急時対応に関するサービス

②生活サービス契約
生活サービス事業を営む者(以下「生活サービス事業者」)と利用者との契約によって、生活サービス事業者が生活サービスを提供し、利用者が生活サービスの提供に対する対価を支払うことを約束するもの。

※生活サービスとは
利用者に対して、有償で、次のサービスを提供するもの。
・衣類、食材等の日常の生活必需品の提供
・食事の提供
・その他生活に関するサービスの提供
自己の指定する者に生活サービスを提供させる場合を含みます。

契約における事業者の遵守事項

事業者は、宿泊所利用契約・生活サービス契約の締結において、これらの契約の勧誘のために、 利用者に、嘘をついたり、解約に関することなど重要な事項を告げないことをしてはいけません。

これは、契約の申込みの撤回や解約を妨げるためにもしてはいけません。

東京都は、事業者がこのルールに違反した場合、宿泊所事業の制限・停止を命じることがあります。

また、都は、事業者がこのルールを遵守しないことで利用者支援に支障がある場合や、法令に違反する行為があった場合、宿泊所等の運営上重大な問題があった場合は、その事業者名等を利用者や福祉事務所に情報提供することがあります。

事業開始時の届出

事業者は、事業の開始時に、この指針で定める各種書類を東京都に提出します。

このとき、契約の内容を説明する資料も提出することになります。

事業開始時に提出する書類

①第2種社会福祉事業開始届(別紙様式1)
②定款(事業の目的に法第2条第3項第8号に規定する事業が含まれていること)
・法人…定款及び法人の登記事項証明書
・個人及び任意団体…設立趣意書又は団体の概要が示されているもの
③事業計画書(別紙様式3)
④(別表2)設備基準を確保していることを明らかにするもの
⑤(別表3)運営基準を確保していることを明らかにするもの
⑥事業者(法人の場合は代表者)及び施設長の履歴書並びに宿泊所事業に関わる職員名簿(別紙様式4)
⑦利用規約及び宿泊所事業に係る契約書
⑧生活サービス事業に係る契約書
⑨利用料設定の根拠及び生活サービス事業の内容
⑩利用料等周知のための様式
⑪建物の賃貸借契約書及び登記事項証明書の写し
⑫建物平面図
⑬区市町村への協議状況及び近隣住民等説明報告書(別紙様式5)
⑭暴力団等ではないこと等に関する表明・確約書及び警視庁への照会にかかる同意書(別紙様式8)
⑮宿泊所登録カード(別紙様式9)

宿泊所利用契約において事業者が遵守すること

事業者は、宿泊所利用契約を定めるにあたって、次の事項を遵守する必要があります。

宿泊所利用契約の手続きについて

①契約の締結前に、利用者に、次の事項を説明し、それらが書かれた書面を渡すこと。
・事業者の名称
・住所
・宿泊所利用契約の期間
・利用料金(月額及び日額)
・宿泊所利用契約の解約に関する事項
・苦情の処理に関する事項
・基本サービスの提供に関すること

②宿泊所の利用にあたって、保証人を求めないこと。

③契約を締結した場合、遅滞なく、①の内容と契約年月日が書かれた書面を利用者に渡すこと。

④契約変更時には、変更に係る契約を締結し、変更内容を記載した書面を利用者に渡すこと。

⑤基本サービスは、利用者の必要に応じて提供すること。

⑥生活サービスは、利用者の希望に基づき提供するものとし、生活サービスの利用を宿泊所利用の条件としないこと。

⑦解約について定める場合は、民法等関係法令を遵守し、利用者にとって特に不利となる条件を設けないこと。

⑧利用者が生活サービス事業の利用契約の一部または全部を解約した場合に、正当な理由なく宿泊所利用契約を解約しないこと。

宿泊所の利用料について

①居室の使用料を徴収する場合には、料金に見合った居住環境を確保すること。また、無料・低額なものであること。

②近隣の家賃水準との比較、建物賃貸借契約金額、宿泊所の管理体制等を考慮し、妥当かつ適切な居室使用料を設定すること。

③生活保護上の被保護者の居室使用料は、居室に応じて国の定める宿泊所住宅扶助特別基準の範囲内の額で定めることとする。

④利用にあたって初期費用として実費相当額以外の費用負担を求めないこと。

⑤光熱水費を徴収する場合は、実費相当とし、内訳を書面で示すこと。

⑥基本サービス(安否確認、生活相談及び緊急時対応)の利用料を徴収する場合には、そのサービスの料金を書面で示すこと。

⑦利用料等は、契約締結時や契約変更時に、文書により本人に明示するとともに、受領した際は領収書等を交付すること。

⑧宿泊所内に宿泊所利用契約、利用料の一覧等を掲示するなど情報開示に努めることとする。

生活サービス契約において事業者が遵守すること

事業者は、生活サービス契約を定めるにあたって、次の事項を遵守する必要があります。

生活サービス契約の手続きについて

①契約の締結前に、利用者に、次の事項を説明し、それらが書かれた書面を渡すこと。
・事業者の名称
・住所
・生活サービス契約の期間
・提供する生活サービスの内容
・それぞれの内容ごとの対価の額(月額及び日額)
・生活サービス契約の解約に関する事項
・苦情の処理に関する事項

②生活サービスの提供にあたって保証人を求めないこと。

③契約締結後、遅滞なく、①の内容と契約年月日を記載した書面を、利用者に渡すこと。

④生活サービス契約は、宿泊所利用契約とは別に締結すること。

⑤生活サービス契約の変更時には、変更契約を締結し、変更内容を記載した書面を利用者に渡すこと。

⑥生活サービス事業は、利用者の希望に基づき提供すること。また、生活サービスの利用を宿泊所利用の条件としないこと。

⑦生活サービス契約を解約する場合、民法等関係法令を遵守し、利用者にとって特に不利となる条件を設けないこと。

⑧利用者が生活サービス事業の利用契約の一部または全部を解約した場合に、正当な理由なく宿泊所利用契約を解約しないこと。

生活サービスの利用料について

①食事の提供
食事を提供する場合の食費は、食数・食事内容等に応じた適切な額とすること。また、利用者に食事の内容を書面で示すこと。

②日用品の提供
利用者の希望により事業者が生活用品を提供する場合は、提供するものに見合った額とし、利用者にその内訳を書面で示すこと。

③その他のサービス
上記以外のサービスを提供する場合は、その内容・対価を明示すること。また、サービス内容が明らかでない費用は徴収しないこと。

④利用料は、生活サービス契約の締結時や、契約内容に変更があったときは、文書により本人に明示すること。

⑤利用料を受領したときは、領収書等を交付すること。

⑥宿泊所内に生活サービス契約、利用料の一覧等を掲示するなど情報開示に努めること。

まとめ

この記事のまとめ

無料低額宿泊所は、宿泊所や生活サービスの利用について、利用者との契約が前提となります。

東京都内では、無料低額宿泊所の事業者は、利用者との契約において、東京都の「宿泊所設置運営指導指針」を遵守して、利用者の利益保護に努めなければいけません。

指針では、無料低額宿泊所の利用について、次の2種類の契約を定めています。
①宿泊所利用契約
②生活サービス契約
契約の利用期間は原則1年間です。
契約内容については、宿泊所の設置時に、東京都に届出が必要です。

事業者は、契約手続きにおいて、利用者に嘘をつくなどの不正行為をしてはいけません。
不正行為は、事業の制限・停止や、事業者名の公表などの処罰があります。

宿泊所利用契約や生活サービス契約は、それぞれ、事業者に次のような遵守事項があります。
①契約内容の書面交付
②利用料・費用負担の明確化
③利用者の自己決定の尊重
④宿泊所利用契約と生活サービス契約の分離独立

この記事を書いた人
行政書士上田

法務省、内閣官房、復興庁での勤務を経て、行政書士・社会福祉士として開業。 14年間、公務員として福祉分野などに関わってきた経験を生かして、許認可申請と生活相談を専門とした行政書士・社会福祉士として、お客様の事業や生活を支援しています。

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