社会福祉法に定める「無料低額宿泊所」を開設するには、事前に手続きが必要です。
この記事は、東京都における無料低額宿泊所の開設手続きを説明します。
無料低額宿泊所とは
無料低額宿泊所とは、社会福祉法第2条第3項に定める第2種社会福祉事業のうち、その第8号にある「生計困難者のために、無料又は低額な料金で簡易住宅を貸し付け、又は宿泊所その他施設を利用させる事業」に基づき、設置される施設です。
社会福祉法
(定義)
第二条 (略)
3 次に掲げる事業を第二種社会福祉事業とする。
(略)
八 生計困難者のために、無料又は低額な料金で、簡易住宅を貸し付け、又は宿泊所その他の施設を利用させる事業
(以下略)
社会福祉法第69条により、宿泊所事業を開始したときは、事業開始の日から1ヶ月以内に事業経営地の都道府県知事に第67条第1項に掲げる事項を届出なければならないとされています。
社会福祉法
(第二種社会福祉事業)
第六十九条 国及び都道府県以外の者は、第二種社会福祉事業を開始したときは、事業開始の日から一月以内に、事業経営地の都道府県知事に第六十七条第一項各号に掲げる事項を届け出なければならない。
(略)
(施設を必要としない第一種社会福祉事業の開始)
第六十七条 市町村又は社会福祉法人は、施設を必要としない第一種社会福祉事業を開始したときは、事業開始の日から一月以内に、事業経営地の都道府県知事に次に掲げる事項を届け出なければならない。
一 経営者の名称及び主たる事務所の所在地
二 事業の種類及び内容
三 条例、定款その他の基本約款
(略)
東京都では、宿泊所におけるサービス水準の一層の向上を図るとともに、より適切な施設運営を確保するため、「宿泊所設置運営指導指針」を策定し、事業開始に当たっての指導をしています。
無料低額宿泊所のサービス形態と現状
宿泊所の提供するサービスは、次の種類があります。
(1)宿所の提供のみ
(2)宿所と食事を提供するもの
(3)宿所と食事に加え、入所者への相談対応や就労指導等のサービスを提供するもの
無料低額宿泊所は、ホームレスを含めた生活困窮者に対して宿所を提供しており、利用者の多くは生活保護を受給している状況といわれています。
平成26年8月1日現在、都内における宿泊所設置数は178カ所、定員数は5,532名となっています。運営主体の大部分は、特定非営利活動法人(NPO法人)によるもので、その他に社会福祉法人や財団法人が設置している宿泊所があります。
無料低額宿泊所の開設までの流れ
無料低額宿泊所の開設については、次の流れ図のとおりです。
この流れ図は、宿泊所の開設手順のみに限定して記載しています。
- STEP1事業の企画構想
無料低額宿泊所は、生活困窮者のための、無料・低額な宿泊施設です。
東京都の条例等に基づいて、どのようなサービスの提供を行なっていくのかを検討します。 - STEP2事業の具体化
施設運営に関する事業内容や収支計画等を具体的に検討をします。
入所施設となる物件の選定にあたっては、建築基準法や消防法に適合した建築物でなければなりません。
入所者の多くは、ホームレスを含めた生活困窮者です。どのようなサービスを提供し、支援を行なうのか、明確な考え方が大切です。 - STEP3東京都への事前相談
具体的な事業計画について、東京都へ事前相談の上、助言等を受けます。
- STEP4施設所在地を管轄する福祉事務所等と協議
福祉事務所の管内においての住民への説明について、どうしていくか、福祉事務所のアドバイスを受けます。
施設について、建築関係法令及び消防関係法令等を遵守しているか、地域の自治体の建築所管部署や消防署と協議します。 - STEP5近隣住民への説明
宿泊所の開設にあたって、近隣住民の理解を得るよう努めなければいけません。
住民への説明状況については、適宜、都や施設開設予定地の自治体に連絡しながら、その指示に従い、準備を進めます。 - STEP6開設準備
開設準備は、住民の理解を十分に得るよう努めながら進めます。
特に、住民説明会等の説明の機会を設けずに、事業を開始することは、トラブルの原因になる可能性があります。
このころ、第2種社会福祉事業(無料低額宿泊事業)の開始届や添付資料を都へ提出します。 - STEP7事前準備
開設準備が整ってきたら、現地にて東京都が事前調査を実施します。
条例等に基づく基準を守っているか、都が現地で確認し、設備・備品の整備状況や、居室面積の確認等を行います。 - STEP8事業開始
東京都から事業者へ、第2種社会福祉事業開始の届出について、受理通知が発出され、正式に事業開始となります。
このタイミングで、東京都から都内の福祉事務所へ、施設の開設が周知されるので、生活保護受給者を入居者として受け入れることになります。 - STEP9事後調査
事業開始後、1ヵ月後に、都が事後調査を実施し、運営状況を確認します。
この開設手順のほか、宿泊所の運営主体となる法人について、定款の変更など、宿泊所を運営するために内部統制の変更手続きが必要になります。
また、宿泊所となる物件について、不動産の登記手続きが必要となります。
加えて、宿泊所を確保するための資金調達が必要となる場合もあります。
まとめ
社会福祉法に定める「無料低額宿泊所」を開設するには、事前に手続きが必要です。
無料低額宿泊所の開設については、次の流れ図のとおりです。
①事業の企画構想
②事業の具体化
③東京都への事前相談
④施設所在地を管轄する福祉事務所と協議
⑤近隣住民への説明
⑥開設準備・事業開始の届出
⑦事前準備
⑧事業開始
⑨事後調査