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無料低額宿泊所のガイドラインについて

社会福祉事業

東京都内において、無料低額宿泊所を設置・運営する事業者は、東京都の指導を遵守しなければいけません。

東京都(中核市の区域を除く)では、無料低額宿泊所と、その宿泊所の利用者に対する食事の提供などの生活関連のサービスについて、「宿泊所設置運営指導指針」というガイドラインを定めています。

この指針は、事業の運営や、建物の設備等について、最低限度の基準を示すことにより、事業の適正な運営を確保し、宿泊所の利用者の利益保護を図ることを目的としています。

この記事では、この指針の概略を説明します。

宿泊所の事業者の遵守事項

宿泊所の事業者は、宿泊所の運営にあたって、次の点を遵守することとされています。

①この指針を遵守して、利用者の意思・人格を尊重し、利用者の立場に立って業務を行うこと。

②「東京都暴力団排除条例」を遵守し、暴力団排除活動に努めること。

③法第69条に定める届出義務(上記参照)を遵守すること。また、未届で事業を実施している場合は、速やかに届出を行うよう努めること。

④宿泊所利用契約・生活サービス契約の締結において、契約の勧誘のためや、契約の申込みの撤回・解約を妨げるために、利用者に対して虚偽のことを告げ、これらの契約のうち解約に係ること等の重要な事項を告げない行為をしないこと。

無料低額宿泊所に対する東京都の指導方針

東京都は、宿泊所事業の適正な運営が確保されるよう、事業者に対して、運営状況の調査や、必要な指導を行います。

①社会福祉法第69条第1項の届出をせずに(以下「未届」)事業を行う事業者に対する指導

※無料低額宿泊所の設置は、第2種社会福祉事業を開始することになるので、社会福祉法に定める届出が必要です。(届出事項を変更した場合も、変更届が必要です)

(第二種社会福祉事業)
第六十九条 国及び都道府県以外の者は、第二種社会福祉事業を開始したときは、事業開始の日から一月以内に、事業経営地の都道府県知事に第六十七条第一項各号に掲げる事項を届け出なければならない。
2 前項の規定による届出をした者は、その届け出た事項に変更を生じたときは、変更の日から一月以内に、その旨を当該都道府県知事に届け出なければならない。その事業を廃止したときも、同様とする。

②宿泊所事業を利用する被保護者(生活保護法における被保護者)について、宿泊所の利用が長期にならないよう、被保護者の転居の支援等、自立支援に努める。

③暴力団排除活動

④都民に対する情報提供

指導に違反した場合はどうなるのか

都は、事業者が次の行為をした場合は、宿泊所事業の制限・停止を命じることがあります。

①都の求めた報告を拒否した場合、または虚偽の報告をした場合
②不当に営利を図り、利用者の処遇において不当な行為をした場合

事業者は、上記の命令に違反して宿泊所事業を継続した場合には、6月以下の懲役または50万円以下の罰金に処せられます。

また、都は、事業者が上記の「宿泊所の事業者の遵守事項」の④(契約時の不正等)に違反した場合も、宿泊所事業の制限・停止を命じることがあります。

都は、事業者がこの指針を遵守しないことで利用者支援に支障があると認める場合や、社会福祉関係法令に違反する行為があった場合、宿泊所等の運営上重大な問題があった場合は、その事業者名等を利用者や福祉事務所に情報提供することがあります。

宿泊所設置のための事前手続

この指針には、無料低額宿泊所の設置に際しての留意事項も定められています。

①事業者は、都の区域内において宿泊所事業及び生活サービス事業を開始しようとするときは、都に事前に相談を行うことが必要です。

②事業者は、宿泊所事業の開始前に、宿泊所を開設しようとする区域を管轄する区市町村の福祉所管課(以下「福祉事務所」)と、管内需要を踏まえ設置の必要性、利用方法等について協議することも必要です。
なお、宿泊所所在地の区市町村が宿泊所について指針等を定めている場合は、その指針等も遵守する必要があります。

③事業者は、宿泊所事業について、説明会の開催等により、近隣住民の理解を得た後、その旨を都に報告することが必要です。
また、利用定員の変更等、事業内容の変更を行う場合は、周辺の生活環境への影響に十分に配慮し、近隣住民の理解を得ることが必要です。

事業の届出

事業の開始・変更に際しては、この指針で定める各種書類の提出が必要です。

事業の新規開始時

①第2種社会福祉事業開始届(別紙様式1)
②定款(事業の目的に法第2条第3項第8号に規定する事業が含まれていること)
・法人…定款及び法人の登記事項証明書
・個人及び任意団体…設立趣意書又は団体の概要が示されているもの
③事業計画書(別紙様式3)
④(別表2)設備基準を確保していることを明らかにするもの
⑤(別表3)運営基準を確保していることを明らかにするもの
⑥事業者(法人の場合は代表者)及び施設長の履歴書並びに宿泊所事業に関わる職員名簿(別紙様式4)
⑦利用規約及び宿泊所事業に係る契約書
⑧生活サービス事業に係る契約書
⑨利用料設定の根拠及び生活サービス事業の内容
⑩利用料等周知のための様式
⑪建物の賃貸借契約書及び登記事項証明書の写し
⑫建物平面図
⑬区市町村への協議状況及び近隣住民等説明報告書(別紙様式5)
⑭暴力団等ではないこと等に関する表明・確約書及び警視庁への照会にかかる同意書(別紙様式8)
⑮宿泊所登録カード(別紙様式9)

事業の変更・廃止時

①社会福祉事業変更(廃止)届(別紙様式2)
②添付書類
ア 定員の変更(部屋割りの変更を含む)
設備基準を確保していることを明らかにするもの、居室利用料の設定の根拠、建物平面図等
イ 施設長等の変更
施設長の履歴書(施設長の要件を満たすことが確認できるもの)、職員名簿等
ウ 利用料の変更
料金設定の積算根拠となるもの
エ その他の変更
変更の内容が確認できるもの

また、事業者は、宿泊所事業の利用者に、生活サービスの提供を行う場合には、生活サービスの内容・料金について届出が必要です。(サービス内容・料金を変更したときも同様)

加えて、事業者は、毎会計年度終了後、3月以内に、各宿泊所の収支計算書・貸借対照表を提出する必要があります。

ただし、定員30名未満の施設(都内に設置している宿泊所の合計定員が50名以上の場合は除く)については、収支の状況を毎会計年度終了後3月以内に公表します。

無料低額宿泊所の設備について

事業者は、無料低額宿泊所を設置するにあたって、この指針に定める基準を遵守する必要があります。

法令遵守・官公庁との協議について

設備について、次の法令を守る必要があります。
①建築関係法令
②消防関係法令

また、宿泊所のある地域を所管する官公庁に、使用用途についての事前相談が必要です。
①都または区市町村の建築関係部署
②消防署
関係官署から用途の変更、設備の変更等を求められた場合には、指導に従うことになります。

宿泊所の建物について

①建築基準法・東京都建築安全条例等関係法令を遵守していること。
(例)耐火建築物、または準耐火建築物であるなど

②競売開始決定等の強制換価手続がなされていないこと。

③消防法・火災予防条例等関係法令を遵守していること。
(例)消火器や避難器具等を設置するなど

④避難口や避難経路を整備し、建物内に掲示するとともに、施設内設備の転倒防止対策を講じる等、利用者の安全確保を図ること。

⑤熱中症予防等の観点から空調設備の整備に努めること。

宿泊所の居室について

①1居室1世帯とすること。
既存で基準を満たさない居室については、基準を満たすよう努めること。

②床面積は、収納設備等を除き、一人当たり7.43平方メートル以上とすること。
なお、地域の事情によりこれにより難い場合は、一人当たり4.95平方メートル以上確保すること。
また、既存の無料低額宿泊所の居室について、この床面積が確保されていない場合には、経過措置期限までに基準を満たすよう整備すること。

③天井まで硬質の壁で区切り、かつ、採光、照明、換気等独立した生活を営むためにふさわしい設備を整備すること。

④プライバシーやセキュリティが守られるよう、環境整備に配慮すること。

⑤地階に設けないこと。

⑥各居室に洗面所、トイレ、洗濯機、浴室を設置するよう努めること。

共用スペースについて

①談話室や相談室を設置すること。
相談室を談話室と兼用とする場合は、プライバシーが守られるよう配慮すること。

②生活サービス事業として食事を提供する場合は、食堂を設置すること。

③共同使用の浴室を設置する場合は、定員に見合った広さを確保すること。

④入浴の機会は、週3回以上とすること。

⑤洗面所、トイレ、洗濯機が共同使用の場合は、居室のある各階に定員に見合った数を設置すること。

⑥東京都受動喫煙防止ガイドラインを参考に、受動喫煙防止に努めること。

無料低額宿泊所の運営について

事業者は、無料低額宿泊所を運営するにあたって、この指針に定める基準を遵守する必要があります。

無料低額宿泊所の人員配置について

①施設長や適切な事業運営を確保するために必要な職員を配置すること。

②施設長は、次のいずれかを満たすものを配置すること。
 ア 社会福祉法第19条第1項の各号のいずれかに該当する者

社会福祉法
(資格等)
第十九条 社会福祉主事は、都道府県知事又は市町村長の補助機関である職員とし、年齢二十年以上の者であつて、人格が高潔で、思慮が円熟し、社会福祉の増進に熱意があり、かつ、次の各号のいずれかに該当するもののうちから任用しなければならない。
一 学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)に基づく大学、旧大学令(大正七年勅令第三百八十八号)に基づく大学、旧高等学校令(大正七年勅令第三百八十九号)に基づく高等学校又は旧専門学校令(明治三十六年勅令第六十一号)に基づく専門学校において、厚生労働大臣の指定する社会福祉に関する科目を修めて卒業した者
二 都道府県知事の指定する養成機関又は講習会の課程を修了した者
三 社会福祉士
四 厚生労働大臣の指定する社会福祉事業従事者試験に合格した者
五 前各号に掲げる者と同等以上の能力を有すると認められる者として厚生労働省令で定めるもの

社会福祉法施行規則
(法第十九条第一項第五号に規定する厚生労働省令で定める者)
第一条の二 社会福祉法(昭和二十六年法律第四十五号。以下「法」という。)第十九条第一項第五号に規定する厚生労働省令で定める者は、次のとおりとする。
一 精神保健福祉士
二 学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)に基づく大学において、法第十九条第一項第一号に規定する厚生労働大臣の指定する社会福祉に関する科目を修めて、学校教育法第百二条第二項の規定により大学院への入学を認められた者

 イ 法第2条に規定する社会福祉事業(以下「社会福祉事業」という。)に2年以上従事した者
 ウ ア又はイと同等以上の能力を有していると認められる者
 エ 上記のほか、都の指定した研修を受講した者

③職員は、可能な限り社会福祉主事の資格を有する者を配置すること。

④利用者の課題に応じ、就労支援・日常生活支援等を行うため、施設長・職員について、必要な資格・経験等を有する者の配置に努めること。

⑤職員の雇用については、労働基準法、最低賃金法等関係法令を遵守すること。

⑥事業者、施設長、職員等の関係者に暴力団、暴力団員又は暴力団関係者を含まないこと。
※この指針における「暴力団関係者」とは、以下の者をいいます。
・暴力団又は暴力団員が実質的に経営を支配する法人等に所属する者
・暴力団員を雇用している者
・暴力団又は暴力団員を不当に利用していると認められる者
・暴力団の維持、運営に協力し、又は関与していると認められる者
・暴力団又は暴力団員と社会的に非難されるべき関係を有していると認められる者

生活サービスの提供について

①生活サービスの提供にあたっては、社会福祉法第3条の基本理念に基づき、個人の尊厳を守り、利用者が健全で自立した生活を営むよう支援すること。

社会福祉法
(福祉サービスの基本的理念)
第三条 福祉サービスは、個人の尊厳の保持を旨とし、その内容は、福祉サービスの利用者が心身ともに健やかに育成され、又はその有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるように支援するものとして、良質かつ適切なものでなければならない。

②食事を提供する場合は、事前に保健所に相談の上、指導に従うとともに、関係法令を遵守して、調理者、調理器具、食品、食品類、食堂等の衛生管理に努めること。

③食事の内容及び回数について、利用者の病状や生活状況等に応じ選択可能とするよう努めること。

④衣類、日用品等の生活用品は、原則として利用者が購入すること。

無料低額宿泊所の施設運営について

①事業経営の透明性を確保するため、領収書や契約書等を保管するとともに、施設の収支等に関する帳簿類を整備すること。

②利用者の安全を確保するため、消防計画等非常災害に対する具体的計画を作成し、避難訓練や消火訓練を実施すること。

③利用者名簿を整備し、利用者支援や非常災害時の対応等に資すること。

④利用者の健康管理に留意するとともに、病害虫の駆除等施設内の衛生管理に努めること。

⑤宿泊所における感染症の発生や蔓延の防止に努めること。

⑥利用者のプライバシーを尊重した施設運営を行うこと。

⑦利用者の個人情報の管理に十分留意して、入居者の個人情報に関する取扱いについては、個人情報保護法を遵守すること。

⑧宿泊所設備や、利用者・職員等による事故の防止に努めること。また、利用者の支援に影響を及ぼす事故が発生した場合は、速やかに都に報告すること。

⑨利用者や住民等からの苦情に対しては、適正な解決に努めること。

⑩つねに地域住民との相互理解に努め、良好な近隣関係の構築に向け誠実に対応すること。

無料低額宿泊所における金銭管理について

①原則として、利用者の金銭管理を行わないこと。

②利用者の疾病等の事情で金銭管理を行う必要がある場合は、原則として地域福祉権利擁護事業等の事業を活用すること。

③②によることができず、やむを得ず事業者が金銭管理を行う必要がある場合には、書面で契約を結ぶこと。
また、金銭管理台帳等の必要書類を整備するとともに、毎月の出納の状況を利用者及び福祉事務所(利用者が生活保護法上の被保護者の場合)に書面で報告すること。

④利用者が生活保護法上の被保護者の場合は、被保護者に代わり福祉事務所から保護費を受領しないこと。(生活保護法により代理受領が認められている住宅扶助費等を除く)

自立支援について

①利用者が、早期に、安定した居宅生活や適切な法定施設へ移行するために、求職活動、日常生活、健康管理における援助を行うなど、利用者の自立支援に努めること。

②利用者の自立を支援するにあたっては、福祉事務所や関係機関と情報交換を行う等、相互に協力をして支援に努めること。

その他

利用者で組織される自治会等が利用者から費用を徴収し、宿泊所内で利用者に生活サービスの提供を行っている場合は、事業者は、その自治会などに収支計算書等の提出を求め、収支状況や衛生管理の把握をするよう努めること。

無料低額宿泊所の利用契約について

事業者は、宿泊所利用契約や生活サービス契約について、この指針の基準を遵守しなければいけません。

契約については、こちらの記事を参考にしてください。

まとめ

この記事のまとめ

東京都内において、無料低額宿泊所を設置・運営する事業者は、東京都の指導を遵守しなければいけません。

東京都の「宿泊所設置運営指導指針」では、事業者の遵守事項について、法令遵守や利用者保護の観点から、おおむね次の事項を定めています。

①宿泊所の事業者の遵守事項
②宿泊所の設置における事前手続き
③宿泊所の設備
④宿泊所の運営
⑤宿泊所の利用契約について

この記事を書いた人
行政書士上田

法務省、内閣官房、復興庁での勤務を経て、行政書士・社会福祉士として開業。 14年間、公務員として福祉分野などに関わってきた経験を生かして、許認可申請と生活相談を専門とした行政書士・社会福祉士として、お客様の事業や生活を支援しています。

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