中古品をあつかう商売をはじめるときには、警察の許可が必要になります。
その許可のことを「古物商許可」といいます。
この記事では、中古品をあつかう商売をはじめる方のために、古物商許可について説明しています。
古物商許可とは
中古品をあつかう商売をはじめるときには、その営業所のある地域の警察(公安委員会)の許可を受けて営業する必要があります。この許可を「古物商許可」といいます。
どうして古物商許可が必要なのでしょうか?
古物商許可については「古物営業法」に定めがあります。
この法律の目的は次のとおりです。
この法律は、盗品等の売買の防止、速やかな発見等を図るため、古物営業に係る業務について必要な規制等を行い、もつて窃盗その他の犯罪の防止を図り、及びその被害の迅速な回復に資することを目的とする。
出典:古物営業法第1条
中古品の中には、窃盗の被害品が含まれている可能性があるといわれています。
窃盗犯が、盗品を転売して、利益を得ようとするためです。
盗品は、転売されると市場に流通してしまうので、取り戻すことが困難になり、被害者が救済されない可能性があります。
そこで、古物営業法では、警察の許可を受けた業者だけが、警察の指導監督のもと、営業できることになっています。
古物とは
そもそも古物営業法にいう「古物」とは何でしょうか。
事業者があつかう商品が、ここでいう「古物」にあてはまらなければ、古物商許可は不要です。
古物営業法は「古物」について、次のとおり定めています。
この法律において「古物」とは、一度使用された物品(鑑賞的美術品及び商品券、乗車券、郵便切手その他政令で定めるこれらに類する証票その他の物を含み、大型機械類(船舶、航空機、工作機械その他これらに類する物をいう。)で政令で定めるものを除く。以下同じ。)若しくは使用されない物品で使用のために取引されたもの又はこれらの物品に幾分の手入れをしたものをいう。(略)
出典:古物営業法第2条
上記のとおり、古物営業法は、「古物」について、一度使用された物品(いわゆる中古品)だけではなく、未使用品や、未使用品に手入れをしたものであっても、それが使用目的で取引されれば、古物にあたるとしています。
よって、具体的には、いわゆる中古品だけでなく、新古品などの未使用品も、古物にあてはまるものと考えられます。
古物の区分について
古物は、古物営業法施行規則で、次の13種類に区分されています。
許可申請時には、取り扱う古物の区分について申請する必要があります。
法第5条第1項第3号の国家公安委員会規則で定める区分は、次のとおりとする。
出典:古物営業法施行規則第2条
一 美術品類(書画、彫刻、工芸品等)
二 衣類(和服類、洋服類、その他の衣料品)
三 時計・宝飾品類(時計、眼鏡、宝石類、装身具類、貴金属類等)
四 自動車(その部分品を含む。)
五 自動二輪車及び原動機付自転車(これらの部分品を含む。)
六 自転車類(その部分品を含む。)
七 写真機類(写真機、光学器等)
八 事務機器類(レジスター、タイプライター、計算機、謄写機、ワードプロセッサー、ファクシミリ装置、事務用電子計算機等)
九 機械工具類(電機類、工作機械、土木機械、化学機械、工具等)
十 道具類(家具、じゅう器、運動用具、楽器、磁気記録媒体、蓄音機用レコード、磁気的方法又は光学的方法により音、影像又はプログラムを記録した物等)
十一 皮革・ゴム製品類(カバン、靴等)
十二 書籍
十三 金券類(商品券、乗車券及び郵便切手並びに古物営業法施行令(平成七年政令第三百二十六号)第一条各号に規定する証票その他の物をいう。)
取り扱う古物の区分によっては、許可申請時に、古物の保管方法が問われる場合があります。
例えば、自動車を扱う場合、保管場所が確保されているか、証明する必要があります。
そこで、駐車場の賃貸借契約書や、保管場所の図面などの提出が求められます。
古物営業とは
古物営業法では、古物をあつかう営業について「古物営業」といいます。
古物をあつかう商売であっても、これらの古物営業にあてはまらなければ、古物商の許可は不要となります。
古物を売買し、若しくは交換し、又は委託を受けて売買し、若しくは交換する営業であつて、古物を売却すること又は自己が売却した物品を当該売却の相手方から買い受けることのみを行うもの以外のもの
出典:古物営業法第2条第2項第1号
上記のとおり、古物営業法は、「古物営業」について、営利目的で古物を売買・交換する行為があてはまるとしています。
具体的には、古着屋、古書店、中古車販売、リサイクルショップ、せどり行為の転売など、多方面の営業があてはまることになります。
他方、次のような場合は「古物営業」にあてはまらないので古物商許可は不要です。
・自分で使うために中古品を買うだけ
・自分で使わなくなった保管品を売るだけ
・いったん売った物を買い戻す(その後に転売するなら許可が必要)
・廃棄物など、処分手数料を取って引き取ったものを売る
・販売者みずからが外国で買い付けたものを国内で販売する
従って、自分で使っていた物や、自分で使うために買ったけれども使わなかった物を売却するだけの場合は、古物商許可は不要です。
ただし、自分で使うために買って保管していたといいながらも、実際は転売のためものであるなら、許可が必要になります。
古物商とは
古物営業法では、古物商許可を得た古物営業者を「古物商」といいます。
この法律において「古物商」とは、次条第一項の規定による許可を受けて前項第一号に掲げる営業を営む者をいう。
出典:古物営業法第2条第3項
古物商の許可について
古物営業法では、古物商を営むときは、営業所が所在する都道府県の警察(公安委員会)の許可を受ける必要があると定めています。
前条第二項第一号に掲げる営業を営もうとする者は、営業所(営業所のない者にあつては、住所又は居所をいう。以下同じ。)が所在する都道府県ごとに都道府県公安委員会(以下「公安委員会」という。)の許可を受けなければならない。
出典:古物営業法第3条
許可の基準について
古物営業法の第4条では、申請者が次の1から9までのどれかにあてはまる場合は、許可を受けられないと定めています。
- 成年被後見人、被保佐人、破産者で復権を得ない者
- 犯罪をした者
罪種を問わず(道路交通法違反も含む)、禁錮以上の刑に処せられた者
執行猶予期間中の者
刑の執行が終了してから5年が経過しない者
恩赦により減刑され、減刑された刑の執行が終了してから5年を経過しない者
恩赦により刑が免除されてから5年を経過しない者
刑が確定したが、刑の執行を受けずに、時効が完成してから5年を経過しない者
古物営業法のうち、無許可、許可の不正取得、名義貸し、営業停止命令違反で罰金刑が確定してから5年を経過しない者
刑法のうち、窃盗、背任、遺失物横領、盗品等有償譲受け等の罪により罰金刑が確定してから、5年を経過していない者 - 暴力団員または暴力団でなくなった日から5年を経過しない者
暴力団以外の犯罪組織の構成員で、集団的または常習的に暴力的不法行為等を行うおそれのある者(過去10年間に暴力的不法行為等を行ったことがある者)
暴力団員による不当な行為等に関する法律により公安委員会から命令または指示を受けてから3年を経過しない者
※すでに許可を受けている者が該当した場合は、許可の取り消しの対象となります。 - 住居の定まらない者
- 古物営業法第24条第1項の規定により、古物営業の許可を取り消されてから5年を経過しない者
※許可の取消しを受けたのが法人の場合は、その当時の役員も含みます。 - 古物営業法第24条第1項の規定により、許可の取り消しに係る聴聞の期日等の公示の日から、取り消し等の決定をする日までの間に、許可証を返納した者で、当該返納の日から起算して5年を経過しない者
- 営業について成年者と同一能力を有しない未成年者
※婚姻している者、古物商の相続人であって法定代理人が欠格事由に該当しない場合は、申請できます。 - 営業所又は古物市場ごとに、業務を適正に実施するための責任者としての管理者を選任すると認められないことについて相当な理由のある者
※ここに記載した1から9のいずれかに該当している者を管理者としている場合などが該当します。 - 法人役員に、1から5までに該当する者がある者
公安委員会は、古物商若しくは古物市場主若しくはこれらの代理人等がこの法律若しくはこの法律に基づく命令の規定に違反し若しくはその古物営業に関し他の法令の規定に違反した場合において盗品等の売買等の防止若しくは盗品等の速やかな発見が著しく阻害されるおそれがあると認めるとき、又は古物商若しくは古物市場主がこの法律に基づく処分(前条の規定による指示を含む。)に違反したときは、当該古物商又は古物市場主に対し、その古物営業の許可を取り消し、又は六月を超えない範囲内で期間を定めて、その古物営業の全部若しくは一部の停止を命ずることができる。
出典:古物営業法第24条
主たる営業所の届出について
許可を受ける営業所については「主たる営業所」を決め、その所在地を管轄する警察に届け出る必要があります。
主たる営業所とは、実質的に営業の中心となる営業所のことをいいます。
組織上の「本店」や、登記上の「本店」であっても、実態として「営業の中心となる営業所」でなければ、ここでいう主たる営業所にはあたりません。
営業所が1か所しかない場合でも、主たる営業所を届け出る必要があります。
すでに許可を受けている古物商が、主たる営業所の届出をせずに、古物営業を行った場合は「無許可営業」となり、古物営業法で定められた罰則の適用があります。
まとめ
古物商の営業には公安委員会(警察)の許可が必要です。
古物とは、一般的な中古品だけではなく、未使用品や、未使用品に手入れをしたものであっても、使用目的で取引されれば、古物にあたります。
古物は、13区分に分かれており、区分に応じた申請となります。
古物商とは、次の営業があてはまります。
①古物の売買
②古物の交換
③委託を受けた古物の販売
④委託を受けた古物の交換
申請者が、犯罪者や暴力団員など、所定の条件に該当する場合、許可を受けられない場合があります。
許可申請時に、主たる営業所を届け出る必要があります。