会社は、法務局に登録をすることで、設立したことになります。(会社法第49条)
この登録のことを「登記」といいます。
会社は、様々な場面で、会社の重要事項を「登記」することが定められています。
このうち、会社を設立するときの登記を「設立登記」といいます。
設立登記の意義
会社は、設立登記をすることで、法務局の登記簿に登録されます。
これにより、その会社は、法律上、設立されたことになります。
なお、会社は、必ず設立登記をしなければいけません。
また、設立登記をしなければ、「会社」を名乗ることができません。
あってはならないことですが、もし、設立登記をしないまま、”会社”を名乗り、取引をして、その取引で何らかの事故が生じた場合、その”会社”は、法律上の会社ではないので、会社として責任が取れません。
よって、その”会社”の代表が、個人的に責任を取ることになります。
これでは、屋号を名乗っている個人事業主と、実質的に何も変わりませんし、個人事業主でありながら”会社”を名乗っているので、悪質で信用できない相手とみなされるでしょう。
設立登記は会社の社会的信用の基礎になる
以上のとおり、設立登記は、その会社が、法律上、確かに存在することの証明になります。
また、設立登記をすることで、「会社」と名乗ることができるようになります。
登記簿は、法務局で誰でも閲覧できるので、その会社の登記簿を閲覧すれば、その会社の存在を確認できます。
また、法務局では、登記簿に記載されていることについて、証明書(登記事項証明書)を発行してもらえます。
会社は、取引相手に、登記事項証明書を提示することで、自社が会社として登記されていることを証明して、信用を得ることができます。
逆に言えば、会社と取引する相手は、取引の安全のために、その会社の登記簿を確認したり、登記事項証明書の提示を求める場合があるということです。
つまり、登記は、会社にとって、法律上の存在を証明するだけでなく、社会的信用の基礎にもなるものといえます。
よって、会社は、設立登記をしなければ、会社名義での契約ができません。
例えば、会社名義で、物を購入したり、賃貸物件を借りたりすることができません。
また、会社名義で、銀行口座の作成や、借入れができません。
会社名義での契約ができなければ、代表者名義で契約するほかなく、それはつまり、会社ではなく、個人事業主ということになります。
「会社」という名称も使えないので、個人事業主として、代表者名義または屋号を用いることになります。
設立登記の手順
設立登記は、法務局で行いますが、その前提として、そもそも、どのような会社にするのかを決め、定款(会社の基本的なルール)を作成し、会社法や定款のとおりに準備を進めておく必要があります。
会社の種類(株式会社や合同会社など)によって違いはありますが、おおまかな手順は、次のとおりです。
- STEP1どんな会社にするのか決める
決定事項:会社の種類(株式会社、合同会社など)、名称、商号、設立時のメンバー(発起人、出資者、役員など)の選定、資本金、資金調達、出資方法、開業にあたって必要な許認可の調査など
- STEP2定款(会社の基本的なルール)をつくる
事業目的、決算期ほか、定款に必要な記載事項を踏まえ、STEP1の内容を定款に落とし込む
- STEP3定款を公証役場で認証してもらう
公証人による定款の法的チェック、電子認証の検討など
- STEP4設立登記の準備
資本金の払込み、設立時の役員人事、印鑑届出など
- STEP5法務局で設立登記
- STEP6【補足】設立登記後の手続き
銀行口座の開設
税務関係の届出(税務署・都道府県税事務所)
労務関係の届出(年金事務所、労働基準監督署)
開業にあたって必要な許認可の手続き
など
以上の手順は、すべて創業者本人がすることもできますし、専門家に任せることもできます。
専門家は、それぞれ、法律で対応できる範囲が決まっています。
行政書士は、STEP1~3に対応できます。
また、STEP6の開業にあたって必要な許認可の手続きにも対応できます。
司法書士は、STEP1~5に対応できます。
また、STEP6の他の専門家の対応範囲外のことに対応できます。
税理士は、STEP6の税務関係に対応できます。
社会保険労務士は、STEP6の労務関係に対応できます。
会社設立時には、様々な手続きをこなしていく必要があります。
どこまでを創業者本人が担当するのか、時間的な効率や、費用対効果、客観的・専門的な精査の必要性などを考えて、苦手な部分や、手が回らないところを、専門家と分担することも一つの方法と思われます。