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遺言でできること 相続に影響を与えることついて

遺言

遺言は、遺言書に書かれる内容によっては、相続人や相続財産に、大きな影響を与えることがあります。

遺言者は、遺言書に何を書けるのか、書くとどうなるのか、把握した上で書くことが責任といえます。

この記事では、相続に影響を与える事項について説明します。

遺言で相続に影響を与える事項について

遺言者が、遺言によって、相続に影響を与える事項は、次のとおりです。
①推定相続人の廃除とその取消し
②相続分の指定・指定の委託
③遺産分割方法の指定・指定の委託、遺産分割の禁止
④相続人担保責任の指定
⑤遺言執行者の指定・指定の委託
⑥遺留分減殺方法の指定
⑦特別受益の持戻しの免除
⑧祖先の祭祀主宰者の指定
⑨保険受取人の変更

以下、個別にみていきます。

推定相続人の廃除とその取消し

遺言者は、遺言で、相続人を廃除することができます。
廃除された相続人は、相続権を失います。
また、廃除を取り消して、廃除した相続人の相続権を復権することもできます。

民法

(遺言による推定相続人の廃除)
第八百九十三条 被相続人が遺言で推定相続人を廃除する意思を表示したときは、遺言執行者は、その遺言が効力を生じた後、遅滞なく、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求しなければならない。この場合において、その推定相続人の廃除は、被相続人の死亡の時にさかのぼってその効力を生ずる。
(推定相続人の廃除の取消し)
第八百九十四条 被相続人は、いつでも、推定相続人の廃除の取消しを家庭裁判所に請求することができる。
2 前条の規定は、推定相続人の廃除の取消しについて準用する。

廃除は、相続人が被相続人(遺言者)を虐待している場合や、著しい非行がある場合など、問題のある相続人についてするものです。
また、家庭裁判所に請求した場合に、家庭裁判所が廃除を認めない場合もあります。

廃除については、こちらの記事も参考にしてください。

相続分の指定・指定の委託

複数の相続人がある場合に、遺言者は、遺言で、各相続人の相続分(相続する財産の割合)を指定したり、その指定を第三者に委託することができます。

民法

(遺言による相続分の指定)
第九百二条 被相続人は、前二条の規定にかかわらず、遺言で、共同相続人の相続分を定め、又はこれを定めることを第三者に委託することができる。ただし、被相続人又は第三者は、遺留分に関する規定に違反することができない。
2 被相続人が、共同相続人中の一人若しくは数人の相続分のみを定め、又はこれを第三者に定めさせたときは、他の共同相続人の相続分は、前二条の規定により定める。

相続分については、こちらの記事も参考にしてください。

遺産分割方法の指定・指定の委託、遺産分割の禁止

複数の相続人がある場合に、遺言者は、遺言で、遺産分割の方法を指定したり、その指定を第三者に委託することができます。
また、5年以内の期間を定めて、遺産分割を禁止できます。

民法

(遺産の分割の方法の指定及び遺産の分割の禁止)
第九百八条 被相続人は、遺言で、遺産の分割の方法を定め、若しくはこれを定めることを第三者に委託し、又は相続開始の時から五年を超えない期間を定めて、遺産の分割を禁ずることができる。

遺産分割については、こちらの記事も参考にしてください。

相続人担保責任の指定

複数の相続人がある場合に、遺言者は、遺言で、相続人の担保責任を指定することができます。

相続人担保責任とは

複数の相続人がある場合に、相続人間の公平を確保するための制度です。
共同相続人の誰かが相続した財産に問題がある場合に用いられます。

例えば、不動産の面積が表示より小さかったり、債権が回収できなかったり、などです。

その場合、そうした財産を相続した人は、他の相続人に比べて損をします。
そこで、他の共同相続人全員で、その損した部分を応分に分担するというものです。

なお、他の共同相続人の中に、資力の乏しい人がいた場合、負担ができない分について、負担を減殺することになっています。

相続人担保責任については、以下に紹介する民法第911~913条に定めがあります。

民法

(共同相続人間の担保責任)
第九百十一条 各共同相続人は、他の共同相続人に対して、売主と同じく、その相続分に応じて担保の責任を負う。
(遺産の分割によって受けた債権についての担保責任)
第九百十二条 各共同相続人は、その相続分に応じ、他の共同相続人が遺産の分割によって受けた債権について、その分割の時における債務者の資力を担保する。
2 弁済期に至らない債権及び停止条件付きの債権については、各共同相続人は、弁済をすべき時における債務者の資力を担保する。
(資力のない共同相続人がある場合の担保責任の分担)
第九百十三条 担保の責任を負う共同相続人中に償還をする資力のない者があるときは、その償還することができない部分は、求償者及び他の資力のある者が、それぞれその相続分に応じて分担する。ただし、求償者に過失があるときは、他の共同相続人に対して分担を請求することができない。
(遺言による担保責任の定め)
第九百十四条 前三条の規定は、被相続人が遺言で別段の意思を表示したときは、適用しない。

以上のとおり、相続人担保責任は、共同相続人の間の公平を確保するため、共同相続人全員に、その資力に応じて、応分負担を求めていますが、これを遺言によって、変更できます。

例えば、誰も担保責任を負う必要はない、と遺言で決めてしまえば、ある共同相続人が損をした分について、他の共同相続人は、担保責任を負わないことになります。

遺言執行者の指定・指定の委託

遺言者は、遺言で、遺言執行者を指定したり、その指定を第三者に委託することができます。

民法

(遺言執行者の指定)
第千六条 遺言者は、遺言で、一人又は数人の遺言執行者を指定し、又はその指定を第三者に委託することができる。
2 遺言執行者の指定の委託を受けた者は、遅滞なく、その指定をして、これを相続人に通知しなければならない。
3 遺言執行者の指定の委託を受けた者がその委託を辞そうとするときは、遅滞なくその旨を相続人に通知しなければならない。

遺留分減殺方法の指定

遺言者は、遺言で、遺留分の減殺方法を指定できます。

民法

(遺贈の減殺の割合)
第千三十四条 遺贈は、その目的の価額の割合に応じて減殺する。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。

法律上、相続では、相続人に最低限の相続分が認められており、これを遺留分といいます。

この点、遺言者が、遺言で、相続人に遺産を残さず、全遺産を第三者に与えるような、相続人の遺留分を侵害するような遺贈は認められるのでしょうか。

そうした遺贈も、一応は有効です。
ただし、相続人には遺留分を取り戻す権利があります。これを遺留分減殺請求権といいます。

上記の民法第1034条は、相続人が、遺留分減殺請求権を行使するときの決まりのひとつです。
遺留分を減殺する複数の遺贈に対して、遺留分減殺請求権を行使する場合、それぞれの遺贈の価格の割合に応じて、遺留分を取り戻すことができるというものです。

例えば、100万円、200万円、300万円の3つの遺贈があり、遺留分が300万円のとき、遺留分減殺請求権を行使した相続人は、3つの遺贈の価格の割合に応じて、50万円、100万円、150万円を取り戻すことができます。

これが民法第1034条が定める原則ですが、同条のただし書きによって、遺言者は、遺言で、この遺留分の割合や順序を指定できます。

上記の例でいえば、100万円、200万円、300万円の3つの遺贈に対して、まずは300万円の遺贈から遺留分を取り戻すよう指定するようなことができます。

特別受益の持戻しの免除

遺言者は、遺言で、特別受益の持戻しを免除できます。

民法

(特別受益者の相続分)
第九百三条 共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、前三条の規定により算定した相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除した残額をもってその者の相続分とする。
2 遺贈又は贈与の価額が、相続分の価額に等しく、又はこれを超えるときは、受遺者又は受贈者は、その相続分を受けることができない。
3 被相続人が前二項の規定と異なった意思を表示したときは、その意思表示は、遺留分に関する規定に違反しない範囲内で、その効力を有する。

特別受益については、こちらの記事も参考にしてください。

祖先の祭祀主宰者の指定

遺言者は、遺言で、祖先の祭祀主宰者を指定できます。

祭祀主宰者とは

祭祀主宰者とは、先祖の供養となる祭祀を主宰する者で、祭祀財産を承継します。
祭祀財産とは、仏壇、仏具、先祖の墓碑などのことです。
祭祀財産は、相続財産に含まれません。

(祭祀に関する権利の承継)
第八百九十七条 系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条の規定にかかわらず、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。ただし、被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が承継する。
2 前項本文の場合において慣習が明らかでないときは、同項の権利を承継すべき者は、家庭裁判所が定める。

祭祀主宰者は、一族の慣習や家訓などで決まることもありますが、相続人が遺言によって指定することもできます。

保険受取人の変更

遺言者は、遺言で、保険受取人を変更できます。

保険法

(遺言による保険金受取人の変更)
第四十四条 保険金受取人の変更は、遺言によっても、することができる。
2 遺言による保険金受取人の変更は、その遺言が効力を生じた後、保険契約者の相続人がその旨を保険者に通知しなければ、これをもって保険者に対抗することができない。

なお、上記の規定は、平成22年4月1日施行の保険法改正によって定められたものです。
よって、同日以前に成約した保険契約については、適用されない可能性がありますので、詳細を保険会社に問い合わせてください。

遺言に記載する際の留意事項

以上のとおり、遺言者は、遺言によって、相続に影響を与えることができます。

影響の大きさを踏まえると、これらの事項を記載する遺言は、事前に、専門家の精査を経ておくことが望ましいといえます。

この点、自筆証書遺言や秘密証書遺言で相続財産の処分を定めた場合、家庭裁判所での検認手続きで、遺言書の方式不備が指摘され、遺言書が無効になるおそれがあります。

以上を踏まえると、相続について定める遺言は、公正証書遺言によることが望ましいといえます。
公正証書遺言は、公証人による遺言の事前チェックがあるので、方式面や内容面の不備を心配することはありません。

まとめ

この記事のまとめ

遺言者は、遺言で、次のとおり、相続に影響を与えることを決められます。

①推定相続人の廃除とその取消し
②相続分の指定・指定の委託
③遺産分割方法の指定・指定の委託、遺産分割の禁止
④相続人担保責任の指定
⑤遺言執行者の指定・指定の委託
⑥遺留分減殺方法の指定
⑦特別受益の持戻しの免除
⑧祖先の祭祀主宰者の指定
⑨保険受取人の変更

これらの事項は、相続に与える影響が大きいことに留意し、遺言が無効にならないように慎重に作成する必要があります。

公正証書遺言は、公証人による事前チェックがあり、遺言の内容を精査できます。